パラダイスウェイティング。

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風が吹いていた。どうしても掴めない、虹色の風だった。寂しかった。僕は、一人だった。誰も理解者が居ない、たった、一人ぽっち! 朝から酒を呑んで、体にいいわけ無いじゃないか! 死にたい!苦しみから、逃れたい! ガラス細工の月夜に欠けた星が空にかかる虹を滑り落ちて来た。明日を識らない緑色の風が吹くと、さぁッ、とアスファルトの上の星の欠片が飛び散って、キラキラと、空中で耀き渡った。誰も識らない、誰も居ない、路上で起こった、人間の死の儀式である。 バター色の風が極彩色に染まって天に飛翔し、日輪は、あかあかと輝く。野の花は発光し、人は白く透き通る。無限の世界から吹いてくる観音の風は、時と場所を選ばない。強大なスペクタクルで世界を染めあげる。浄土というものの姿を明らかにし、認識を改めさせる観音の風に世界は変貌するであろう。おお、人間よ、その瞬間を、もう少しだけ、待て。
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