※《美鈴、女神の頭上に落下します》【挿絵】

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※《美鈴、女神の頭上に落下します》【挿絵】

 ここは、美鈴がいた世界とスイラジュンムという世界の狭間にある世界。  水を司る女神スイクラムは、他の世界と繋げるため、この狭間の世界に領域空間を特別に創った。  そうスイクラムは、自分が守護する世界スイラジュンムに、勇者を召喚するためこの領域空間を創ったのだ。  この領域空間の周りは、白い雲で覆われ水色一色で四角い箱庭のような空間になっている。  その内側の床の一部には、青いじゅうたんが敷かれていた。  そのじゅうたんの上には、煌びやかな玉座が置かれている。  その玉座にスイクラムが座り、キラキラ光る水色でキレイな長い髪を無造作にかきあげ何やらブツブツと言っていた。 「もぉ〜、いったい()()()()()ぉぉぉぉぉ〜」  スイクラムは、頭を抱え大声で叫んでいる。 (ハァ。なぜなの? 何ゆえこうも召喚魔法が上手くいかないのでしょうか?  あのドジ女神のリアスでさえ、自分の世界にイケメンで強い勇者を召喚できたというのに。あ〜凄く悔しいですわぁ)  そうスイクラムは何度も勇者を召喚するも、スカしか現れずイライラしていた。 「今度、失敗したらどうしようかしら?」 7822fd78-0cc7-4d04-823d-de7c8105c690   そう考えているとスイクラムの頭の上に、雫がポタリと落ちる。 「ハテ? 水滴がなぜ」  スイクラムは、頭を触りながら天井を見上げた。 「えっ、何事!?」  スイクラムは、天井から落ちてくる者をみると驚き声をあげる。 「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ〜!」  そう叫びながら美鈴は、水と共にスイクラムの上に落ちた。 「イタタタタァ……」  美鈴はお尻を摩りながら、状況を把握しようとする。 (ここって、いったいどこなの?)  美鈴はそう思い、辺りをキョロキョロする。すると、自分が誰かの上に乗っている事に気づき慌てて立ち上がった。  そして美鈴は倒れているスイクラムを覗くと、全身びしょ濡れで体をワナワナと震わせている。  スイクラムは、ゆっくり上体を起こし美鈴をみると睨みつけた。 「貴女は、いったい何者ですかっ! 何ゆえ、妾の頭上から現れた」 「ハァ? そう言われても、ウチが知りたいです。そもそも、なんでここにいるのか分からないんですけど」  美鈴がそう言うとスイクラムは、眉をピクッとさせ濡れたまま玉座にすわる。 「まさかとは思うが。お前、水のような物に触れてここに来たのではないのか?」  そう聞かれ美鈴は、びしょ濡れの自分をみたあとスイクラムの方に視線を向けた。 「ん〜確か、そうだったと思います。水溜まりに飛び込んだら、ここに落ちたんだよね」 「なるほどねぇ。ん〜女かぁ。そうなると、今回も失敗ってことね。まぁとりあえず、この者をどうしようかしら?」 「あのぉ〜。もしかして、あの水溜まり貴女が創ったんですか?」  美鈴は、じーっとスイクラムをみる。 「ええ、そうよ」 「なんのために……って、そもそも貴女は誰なんですか!」 「妾は、水を司る女神スイクラム。そして貴女のいた世界とは別の世界、スイラジュンムを守護する神です」  スイクラムは、このままじゃ話しづらいと思った。そのため能力を使い、水浸しになっている周囲と自分と美鈴を元の綺麗な状態にする。 「そして妾が、お前を召喚した。勇者としてね。ですが失敗だったようです」 「ハァ、女神さまなのかぁ。って事は、ここって天国? それに召喚が失敗ってことは、元の世界に戻してくれるんだよね?」 「いいえ。ここは、妾が創った狭間の空間にすぎん。そうですねぇ」  スイクラムは、どうしたらいいかと考える。だがなぜこのような者のために、悩まなきゃいけないのかと怒りが込み上げてきた。 「ええ、普通ならそうする。だけど、お前の現れ方といいその態度。それに、余りにも見た目がダサすぎて不愉快です! さて、どう処分をしようかしら?」  そう言うとスイクラムは、ムッとした面持ちになり美鈴をみる。 「ちょっと待って! それって、どういう事なの? 一方的に召喚しておいて、処分をするって信じられない。いくら女神さまだって、それは横暴なんじゃ!」  あまりにも身勝手すぎるスイクラムの振る舞いに、美鈴は怒りを露わにする。  だがスイクラムは、美鈴のその態度に対し更に怒り狂った。 「クッ、面白いじゃない。女神であるこの妾に、そのような態度をとるとはねぇ。だけど処分する前に、お前の名を聞いておこうかしら」 「なんで今さら、名乗らなきゃならないんですか!」 「それもそうね。まぁいいわ。言わずとも、お前の記憶を調べれば済むこと」  そう言いスイクラムは、美鈴の方に向け手を翳すと記憶を調べ始める。 「なるほどねぇ。お前の名前は、武野羽美鈴。ムノウか。クスッ。これは、お前の人生と比例していてこっけいだわ」 「笑うな! それに、勝手に人の記憶を覗くなぁぁぁぁ〜」  美鈴はスイクラムに詰め寄ろうとする。だがスイクラムは危険を察知し、咄嗟に水の防壁を造った。 「妾に歯向かうとはねぇ。自分の立場が分かっていないとみえる。フンッ! まぁいいわ。どうせ処分するのですから」 「はっ! だから、なんで処分をするって話になるんだよぉ〜」  そう叫ぶもスイクラムは、既に呪文らしきものを唱えている。  すると美鈴の真下に水溜りが現れた。 「えっ! これって!? うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ〜!!!!!」  そう叫び美鈴は、水溜りに吸い込まれていった。 「フンッ! せいぜい、野獣のエサにでもなるがいいわ。ん? そういえば、あの女の能力を消すのを忘れてたわね。まぁいいか。恐らく、たいした能力じゃないだろうし」  そう言うとスイクラムは、これからどうするか思考を巡らせる。 「さてと、次の召喚の準備をしないとね。それに、ここは余り良くないようだから、場所を変えた方が良さそうねぇ」  スイクラムは目を閉じ真上に手を翳すと、  《∞〜⌘◆--》  神語を使い唱える。すると、新たな領域空間を別の場所に創った。  そしてスイクラムは、新たに創った領域空間へと転移する。  美鈴はその頃スイクラムの魔法により、スイラジュンムに移動させられ遥か上空から急降下していた。 「うわぁぁぁぁぁぁ。し、死ぬぅぅぅぅぅぅぅ〜。あのケバ女神ぃぃ〜。覚えてろよぉぉぉぉぉぉぉぉぉ〜!」  そうスイクラムはまたもや魔法に失敗し、美鈴を野獣の住処の遥か上空に転移させていたのだ。  そして美鈴は泣き叫びながら、スイクラムの悪口をいっぱい叫び落ちていったのだった。
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