再降魔世

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  「これはまた…すっかり変わってしまったものだな…。」 空へ向かって伸びる金属の建物。 地を走り抜ける機械乗り物。 武装とは縁遠い程の軽装な人間達。  (まぁ…数千年も経てば当然か…。) パチンッ! 指をひと鳴らしして、黒いロングの法衣から身軽な現代人に近い服装に変える。  (あとは…まぁいいか。) 長い髪と黄金の瞳のまま、私は歴史書を求めて図書館へと向った。  「ゔーむ…」 困った。 ここに在る一番古い歴史書を読んでも、やはり記されていないのだ。 私が眠りに就く前の時代の事。  (まぁ…古すぎて遺っていないのだろうな…。) どうやら戦争やら自然災害やらと相変わらず何度も繰り返していた様だ。  「結局、私が居ても居なくても、そうなったということか…。」  (くだらない…。) そう、私は数千年前、人間達によって封印された。 と、言う事になっている。 実際は封じられたように見せかけて、自ら眠りに就いたのだ。 私自身、特に何もしていないというのに、人間達は強大な「力」を持つ私を恐れ、排除しようとしたのだ。  (『魔王』等とも呼ばれていたか…。) 様々な理由を付け、多くの作り話広め、恐怖は病のように伝染し、権力者の言葉を信じた者達は操り人形の様に武器を取り、私に幾度となく刃を振り下ろした。 そうなってしまっては、私も多少の反撃はせざるお得ない。 だがそれによって溝は更に深まり、最終的にはもうどうしょうもなくなったのだ。  (しかし、現代の人間達が私を知らないのは好都合だ。) 過去については、この星の自然意志達に聞くとしよう。完全ではないが一応魔力は使えている事だし。 ガシャァンッ!! 突然、幾つかの窓ガラスが強風によって割れ散った。 ジリリリリリリリッ!! けたたましく響くサイレンとアナウンスが告げる。  『宇宙人が接近しています!民間の方は至急シェルターへ向かって下さい!生命を守る行動をとって下さい!!』  (宇宙人?どういう事だ?)  「おい、アンタ!!何ボーッとしてんだっ!早くシェルターに向かえっ!!」 一人の男が、急いで私に叫ぶ。  「何があったんだ?」  「何って宇宙人の襲撃に決まってんだろっ!ボケてんのかっ!!」 人間はそう言い捨てて消え去った。 ガガガガガガガガッッ!! 外から激しく銃の音が響き合う。  「ほぅ…機械の方は衰えてはいないようだな。まぁ、それでも『魔力』には敵わないだろうがーーー。」 煙の中から一つの影が現れる。  (あれが宇宙人…。) ほぼ人間の姿と変わらない。 違うといえば額に宝石のような石が埋め込まれているくらい。  (攻撃しているのは機械人形か…しかし彼はーーー)  「うわああああああっっ!!」 機械人形が投げた壁が逃げる青年と私の方へと向かってくる。  「やれやれ…。」 私は襲い来る壁の前に立ち、それを指先で弾いた。 ガラガラガラガラッ… 壁だったものは一瞬で足元へと砕け散った。 側で怯える人間を見下ろす。  (随分、退化したものだな…人間も…。)  「あ、ありがとうございますっ!!けど一体どうやって…」  (マズいな…今のを見ていたか…早く記憶をーーー)  「お願いです!コレを使って下さい!!きっと貴方こそが選ばれし戦士!」  (また都合の良い事を…。) 青年は一つの腕輪を私に渡す。  「この変身装置があれば奴等を倒せますっ!我々の技術を全て詰め込んだ最強の装備です!!」  (うん、いや、そんなものなくても私の力でなら十分倒せるんだが…。しかし下手に魔力を使えばまた数千年前と同じ事になりかねん。)  「ーーーわかった…。」  「腕輪を胸にかざして『変身っ!』と、言って下さい!!」  「…わ…かった…。」 何だか物凄く恥ずかしいんだが…。 とりあえず言われた通りにするしかない。  「へ…変身…?」 パァァァアアッ!! 眩い光が私を包み込む。 魔力に似た力で装備が体に施される。 カシャァンッ!! かつての人間が使っていた武具や魔法よりは性能は良さそうだ。 が、正直そのままの姿で十分戦えるのだが…。 とりあえず機械人形を止める事にする。  (ーーーこの装備…私の力で壊れなければいいが…。) バレないように僅かな魔力を拳に込め、機械人形達へと放った。 数分後。 ガシャアァァンッ!! 全ての機械人形は戦闘不能となった。 すると機械人形を操っていた宇宙人に、人間達は「今だ!」と襲い掛かろうとした。 キィンッ! 私は人間達の動きを止め、宇宙人と呼ばれる者にテレパシーで話し掛ける。 〘無益な殺生は好まない…えっと…とりあえず逃げてくれ。〙  〘何っ…!?どういうつもりだ。お主は人間の味方ではないのか!?〙   〘私にも事情があってな…それに君達にも襲撃する事情があるのだろう。私はその内情を知らぬまま君にここで人間に捕まって酷い目にあっては欲しくない。〙 すると、宇宙人と呼ばれる者は私を真っ直ぐ見つめて  〘わかった。感謝する。〙 次の瞬間、彼は光と共に姿を消した。  「あっ…!まてっ!!クソッ…!」 漸く動けるようになった人間達が辺りを探し回る。  (やはりな…。) あの宇宙人と呼ばれる者。テレパシーを受け取り、応える事に抵抗が無かった。 あれは私が眠りに就くよりももっと前に、地球から外へ出た『元人間』だ。 何故またこのような形で人間達は争っているのだ…。  「あっあのっ!ありがとうございました!!おかげで助かりましたっ!やはり貴方の『力』は格別です!なので…その…是非我々に協力して頂けないでしょうか?」 青年は深々と頭を下げ、懇願する。  「う〜ん…事情による…かな…。」  「で、では詳しいお話をっ…!!」 何にせよこの時代の事を詳しく知る必要があるな…。 ザリッザリッっと、 荒んだ地を歩く音が、痛々しく響く。 まぁ…最終的にまた私を滅ぼそうと向かって来る時が来たら、また眠りに就くか… それともーーー。  (しかし…あの変身とやらは何とかならんのか…しなくても強い分、流石に毎回アレは恥ずかしいぞ…。) 前を歩く青年を見つめ、周囲の期待に満ちた眼差しを受けながら、私は心の奥底で独り呟く。  『私は少々、怒ってはいるのだよ。 過去だけで無く現代の君達にも。 このくだらない争いを続けている事にね。』 さて、 次はどちらを選ぼうかなーーーーー。
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