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そんなことを考えていると、
「おう、久しぶりじゃないか!」
店のドアが開き、入ってきたKが俺を見つけて手を振ってきた。
噂をすれば……とやつか。
俺はちょっと対応に困りながら、曖昧に返事をした。
隣に座ったKに、
「えっと、彼女さん、大変なんだって?」
そう話しかけてみた。するとKは、あー、みたいな気のない返事をしただけで、
「それよりよ。今日はパチンコで大当たり!また奢ってやるから、思いっきり飲もうぜ!」
ガハハ、と下品に笑うK。
恋人が入院中なのに、それを気にする素振りもなく、ギャンブルの話をするKは、以前とは明らかにどこかが変わっていた。
「じゃあ、俺はこのへんで」
妙な気配を察知したのか、Cは俺を見捨てて、1人で帰ってしまう。
「んだよ、ノリが悪いな。まあいい。いやさあ、もうこの女神様を付けてから、俺の人生、絶好調なんだよー」
ブレスレットを愛おしそうに撫でながら、まるでノロケ話をするように語るK。
「なあKさん、それ、付けるの止めた方が――」
「やめときな、あんた」
俺の言葉を遮ったのは、カウンターの向こうにいるママさんだった。
その剣幕に俺は押し黙り、しばらくKに適当に付き合った。
そしてKがトイレに行ったとき、
「さっき、ママさん、なんで俺を止めたの?」
「あの人からブレスレットを引き離そうとしたら、絶対に祟られる。あれは、そういう代物だよ」
「そんなこと、どうして分かるの?」
「あれ、石に見えるだろう?けどね、たぶん……」
他に客もいないのに、ママさんはそっと声を潜めた。
「骨だよ。きっと、人間の」
この夜以降、俺はKに会わないよう、このあたりには行かないようにしている。
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