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「実は昨夜、おかしな夢を見たんだ。家の近くの道を歩いてるんだけど、そうしたらあるマンションの前のゴミ捨て場で、女の子が体育座りで寂しそうに座ってるんだ。
小学生くらいかな。おかっぱ頭で、服は和服っぽかった。ずっと俯いてるから、顔は分からないんだけど」
「それで?」
「いや、そこで目が覚めたんだ。ただ、昼間になって競馬場に行こうと家を出ただろ?そうしたら、夢に見たのと同じゴミ捨て場の前を通りかかったんだ。なんとなく意識してそっちを見たら、このブレスレットが捨てられてたんだ」
「えっ、ゴミを拾ったの?」
「うん。なんか、あの女の子を思い出しちゃって、スルーできなかったんだよね」
Kはちょっと恥ずかしそうに笑って、ちゃんと洗ったからな、と言ってから、
「それでまあ、何かの縁かと思って、こいつを付けて馬券を買ったんだ。そしたら……」
「当たった、と?」
「そう。だから、こいつは俺の女神様なんだ」
「なるほどねえ」
熱弁するKに反して、俺はちょっと不気味だなと思いながらブレスレットを眺めた。
パワーストーンみたいなものなのか。詳しくはないので、石の種類は分からない。
「いいなあ、K。俺にも貸してくれよ」
「バカ言うな。こいつは、俺に拾って欲しくて夢に出てきたんだ。他人に貸せるかよ」
別の常連客とのそんなやりとりを横目に、俺はKの奢りでいつもより2杯、多く飲んだ。
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