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まさに場末といったかんじのスナックで焼酎を飲んでいると、Cがふと、
「お前さん、Kには会ったかい?」
周りを憚るような口調で聞いてきた。
「いえ。ここんとこ、忙しくて。この辺に来るのも久々なんです」
「そうか。いや、な。Kのやつ、最近ついてないらしいんだ」
「ついてない?あの万馬券で、運を使い切ったとか?」
ちょっと茶化す気持ちで言ったが、Cはクスリともせず、静かに首を横に振った。
「それが、ギャンブルはあれからも調子が良いんだとよ。俺も何度か、奢ってもらった」
「だったら……」
「不幸なのは、あいつの周りだ。彼女さん、交通事故で大けがして、今も入院中らしい」
「えっ?」
「それに他にも、友だちだの仕事仲間だのが、次々と不幸に遭ってるそうだ。実は俺も、あいつと飲んだ夜の帰りに、車に轢かれかけた」
Cはグラスに口をつけるだけで、またカウンターに戻す。その横顔には、怯えるような苦笑いが張り付いている。
「なにか、よくないことが起こってるのかもな。まあ、そんなオカルトじみたことなんて信じてはいないんだが。お前も、Kと会ったら気をつけろよ」
俺は話を聞きながら、Kが見た夢の話や、ブレスレットのことを思い返した。
やはり、曰くがある物だったのだろうか。
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