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物心つく前からテレビにかじりつき、正義のヒロインが悪を倒すアニメを見ていた。ずっとずっと、そんなアニメのヒロインに憧れていた。けれど、現実は残酷で、私には何の力もなくて、正義が勝つとは限らないことも知った。高校2年生の私は根暗の陰キャオタクで、コミュ障のぼっち少女になっていた。
「清水さんっていつも一人でいるけど、生きてて楽しいのかな」
「それな。」
「見た目、幽霊でしょ。前髪長すぎ。化粧もしてないし、どこの田舎の小学生だよって感じ?」
そんな陰口を言われるのはしょっちゅうのことなので、聞こえないふりをして本を読み続ける。本はいい。正義が勝つ素敵な物語の中にいけるから。
「清水さんは根暗でつまらないから」
そう言って、スクールカースト上位ギャル3人の話題が私から離れていった。反応がなければ変にからまれることもなくなる。これも上手に生きるための知恵だ。
「おい、みーちゃん」
どうやら次の標的は三上さんになったようだ。おどおどとしている三上さんにギャルのリーダー格が近付く。
「みーちゃん、昨日頼んだ本買ってきてくれた?」
「え?」
「え、じゃねーよ。」
三上さんの机に他の2人も近付き、囲むようにして見下ろしている。
「だって、あの・・・」
「まあいいや。とりあえずジュース買ってきて。三人分」
そういって財布から小銭を出して三上さんの机に置くギャルリーダー。
「あ、え、・・・でも・・・お金、足りない・・」
クズどもが、と思いながらも見て見ぬふりをしているこの場にいる人間や私もクズだな、と思う。私の大好きなアニメ、「魔法戦隊キラピカファイブ」のレッドならここで助けに入るのだろうが。
ふと視線を落とすと、バッグに付けたキラピカレッドの愛花ちゃんキーホルダーが私を見ている気がした。
(まさか、何もしないよ)
私は大好きなキャラクターのキーホルダーから逃げるようにして、教室を出た。こんなことは何度もあった。でも人を助けるなんてできない、ということも知っている。
なにもせず、目立たず、静かに。これが私のモットー。
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