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“がやがや” “がやがや” “がやがや”
“ぞろぞろ” “ぞろぞろ” “ぞろぞろ”
「ふ~、ダイコン、もうすぐ村に着くかな?」
「隊長! 村が見えました!」
「そうか、やっと着いたか。
しかし、スライム達…随分増えやがったな!」
「これも、隊長の人徳で…」
「何が人徳だよ!僕は何もしてないじゃないか!」
「そこが隊長のいい所で…」
「なんだそれ?
ところで、何匹いるんだい?」
「へい!100匹!」
「100匹!! また増えたね~」
「きりの良いところで!」
「おっ!村に着いちまった。
“全員止まれ~~~!”
ダイコン、偵察に行って来て!」
「えっ!あっしが?」
「ダイコンはいつも暇そうじゃないか!」
「それは隊長だって…」
「いいから行けよ!」
「分かりました。…で何を偵察するんです?」
「ん~と…村の大きさとか、何人居るのとか、…色々だ!」
「分かりました」
「ただ今、帰りました!」
「えっ!もう、帰ったの?」
「へい!」
「じゃ、村の大きさは?」
「生まれ故郷の隣村と同じくらいです!」
「…………じゃ、村人は何人だ?」
「生まれ故郷の幼なじみのポンキチの家族と同じでした!」
「…………何も分からねえ?」
「あと、犬が二匹と猫が三匹!……色々と…」
「分かった!僕が悪かった。ご苦労さま」
「ご苦労さまって…褒めてもらったよ!」
「隊長!大変です!」
「たまご、どうした!」
「へい!この村の村長が隊長に……」
「村長が?……分かった。会おう」
厚揚げは村長に会う事に…
「お願いです!命ばかりは……」
村長はいきなり手を合わせた!
「えっ!あ…いや、その……」
厚揚げは困った。
「この村は貧しい村で…あなた達にあげる物は何もありません」
村長は涙ながらに訴えた。
「いや、村長…僕達は旅の者です。
少し休ませて頂ければ、それで…」
「えっ!魔物の山賊じゃなかったのですか?」
「僕達のどこが山賊に見えます?」
スライム達、100匹は小さな村を取り囲んでいた。
「どう見ても、スライム達の山賊にしか…」
「まぁ…、見方によっては見えなくも無いかな……ゴホン!」
「この村には、若者がいません。
年寄りと子供だけで、あなた達の面倒を見る事ができません」
「村長さん、若者達は何処かに行っているのか?」
「それが、魔王に連れて行かれたのです」
「魔王め!」
厚揚げは考えた!
「それなら、私達が何とかしましょう」
「何とかとは?」
「少しこの村でやっかいになる間、村の為に何かお手伝いしますよ!」
「本当ですか?」
「皆、いいな~!」
“オォ~~~~!”
厚揚げ達は村の再建を手伝う事になった。
「お前達は新しく家を作れ!
お前達は山で食べ物を探してこい!
お前達は畑を作れ!
お前達は……」
「隊長!」
「なんだ!」
ダイコンとたまごが……
「実は…」
「なんだよ!ハッキリ言えよ!」
「私達も隊長の言う事を聞きたいのは山々なんですが……」
「なに~、手伝うのが嫌だってのか?」
「いや、そうじゃなくて…あっしを見てください」
「えっ?スライムのお前がどうした?」
「手伝いたいのは山々なんですが…手も足も出ないんで!」
「手も足も出ない……て、確かに手も足も…無いな」
「あっしらスライムは、う○この型をしているので手も足も出ないんです」
「確かに…う○この型をしているな」
「う○こが悪いんじや無いんです、私達が悪いんです」
「いや、う○こもお前達も悪く無い」
「ダッ~! もう! う○こ、う○こって…また、強制非公開になったらどうすんのよ!」
天の声が聞こえた。
「えっ!強制非公開って?」
「アヮアヮ! 何でも無いわ!」
久しぶりに天の声が現れた。
「おい!か○子~」
「だから~名前を呼ぶな~
何よ?厚揚げ」
「スライム達が手も足も出ないって…」
「何の話~?」
“フムフム” “フムフム”
「なるほどね。分かったわ」
「何とかしてくれるのか!」
「何とかするけど、私じゃないわ!」
「じゃ、誰が?」
「決まってるじゃない!スライム達自身よ!」
「スライム達自身て……」
「いいかい!よくお聞きよ!
スライムってなに?」
「えっ!スライムって…ぷよぷよでふにゃふにゃで……」
「だから~、体の型を自由に変えられるよね。って事は~」
「って事は~……」
「わからんのか!
人間の姿になる事も出来るって事!手も足も出るって事よ!」
「あっ!なるほど!」
「あっ!なるほど!じゃないわよ!
いい、固定観念は捨てるのよ!
そうすれば道は開ける!
……私良いこと言った~?」
誰も聞いていなかった。
こうして、勇者達は少し村に留まる事になった。
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