島の息吹、空の囁き

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●前兆 激しい波音が夜の静寂を破り、投光器が海岸線を照らし出していた。救助隊は息を切らして、決死の捜索を続けていた。「いたぞー!」という声が突然、暗闇を切り裂いた。スポットライトが小さなゴムボートに当たり、その上には頭からずぶ濡れで息絶え絶えの男がいた。海面には血まみれのヘリコプターのブレードが静かに浮かんでいる。 「他にけが人はいるのか?」と救助隊員が尋ねた。 男はうわ言のように呟いた。「違う... こいつは俺が... 俺が倒したんだ...」 「こいつって、誰だ?」もう一人の隊員が問い詰める。 「こいつって... みりゃわかるだろう。ヘリコプターだ」と男は息も絶え絶えに答えた。「ヘリコプターだよ!返り討ちにした。でも、まだまだ追ってくる... 気をつけろ...」 隊員たちは顔を見合わせ、困惑した表情を浮かべる。その時、一人の隊員が男の手に何かが握られているのに気づいた。それは光り輝く金の延べ棒だった。隊員はさらに、男の横に転がっている×印のついた古びた海図を発見した。 「これって、この地図って『神秘と怪奇のマガジン月刊レムリア』の付録じゃねえのか?」隊員が声を上げた。「まさか、あんた!本気で?」 しかし、彼の声は遠くから聞こえる救急車のサイレンにかき消された。男は担架に乗せられ、救急車へと運ばれていった。残された隊員たちは、波音とサイレンの音に混じる風のうなり声を聞きながら、不可解な出来事に困惑し、次の行動を考えていた。 ●第1話 その日の午後、南鴨嶋島民体育館で開催された少年野球大会。 選手たちの青春の瞬間が、グランドの一面に広がっていた。 太陽の光が芝生に照りつけ、その緑はまるで宝石のように輝き、風になびく選手たちの白いユニフォームが場を彩っていた。 観客席には、島中から集まった保護者や地元の人々が、真剣な表情で選手たちを見守っていた。 彼らは一つの熱い期待と希望を胸に抱き、子供たちのプレーに酔いしれていた。 その中でも特に目立つ存在がいた。 それはあるチームの右翼手・よしのぶだった。 彼はまだ小柄な体格ながらも、その俊敏な動きでフライを見事にキャッチしていた。 外野手たちは声を掛け合い、一心不乱にレフト方面に伸びた打球を追いかけていった。 しかし、突如として少年たちの大会は中断されることとなった。 グランドの外周には大人たちが駆け寄り、急いで選手たちを退場させる慌ただしさが広がった。 何か異変があったようだ。 「うわああっ!」 よしのぶの目の前に、金属製の剣のようなものが突き刺さった。 彼は驚きながらも、身をかわしてその危険を避けたが、手元からボールがこぼれてしまった。 「おいっ、何だこれは?」 大人たちが混乱する中、よしのぶは地面に深々と食い込んだ金属製のブレードに目を留める。 そのブレードはねじ曲がっていたが、素人目にもヘリコプターの回転翼であることがわかる。 「何が起きたんだ?」 九回裏、二死満塁の逆転のチャンスが迫っていたが、この異変により試合は中断された。 球審や両チームの監督たちは、安全確認のために子どもたちを退場させ、大人たちは緊急対応に追われた。 「パイロットはどこにいる?」 「墜落したのか?」 「それよりも、この異物はどこから飛んできたんだ?」 大人たちは、空には雲一つないのに、目を皿のようにして機体を探し回るが、何者かの気配は見当たらない。 一方で、急いで現場へ駆けつけた男性教師は、大きな瞳のようなパラシュートを見つけた。 「うわあああ。 こっちを見ないで!」 南鴨嶋諸島は本土から船で三日半かかる。 その中でも南鴨嶋はさらに船で一時間も離れた場所に位置している。 鳥も通わぬと謳われる沖の鴨嶋に、たった一つの中学校が存在している。 「軍の一番近い基地でもここから何千キロも離れていますよ。 航続距離の範囲外だ」 相手チームの監督が首をかしげる中、不思議な事態に戸惑いを隠せない表情を浮かべていた。 政府は問題を最重要視し、駐留軍に対して事実関係を問いただした。 だが、回答は素っ気ない内容だった。 「そのような機体も機種もわが軍には存在しない」 それに満足する国民ではなかった。 たちまち議会が炎上した。 基地の司令官は緊急記者会見の場でしどろもどろに釈明した。 「いえ、隠蔽でも否認でもなく、本当にそんなヘリコプターは世界中のどのメーカーにも存在しないんですよ」 政府は独自の専門家チームを編成し落下事故現場に派遣した。 持ち帰った部品を国内外の航空機メーカーに提示し、徹底的に調べ上げた結果、司令官の証言が裏付けられた。 「あるはずのないヘリコプター。 どこから?」 「自作自演ヵ?」 新聞の一面をさまざまな憶測が賑わした。 特に悪質なのはスポーツ紙だ。 断定的と見せかけて小さく「か?」と疑問符を添える。 それに急進的なネットユーザーが脊髄反射した。 たちまち沖の鴨嶋島民や学校に抗議が殺到する。 「賠償金目当ての自演だろう」 「いくら貧乏だからって嘘で島おこしとか、ないわ」 「元島民として恥ずかしいです」 島の人々は根拠のない噂に傷ついた。 しかし、事故現場からこっそりと残骸を持ち帰った男がいた。 彼は兵器メーカーの開発責任者だったが、派閥争いに敗れ、逃げるようにしてこの島へ来た。 今では漁船の修理をして細々と暮らしている。 「これはあいつらを強請るネタになるぞ」と、その男は、持ち帰ったヘリコプターの残骸を隠し持ち、内密に解析を進めた。そしてついに、そのヘリコプターが自分たちのメーカーで製造されたものであることを突き止めた。彼は、裏切り者として狙われる恐れがあると感じながらも、その情報を売り込むことを決意する。彼は手始めに、大手メディアの取材を受け、その証拠を示した。しかし、その情報が世間に公表されることで、彼自身も命の危険を感じることになる。彼は、自分がもはやメーカーの一員ではないことを自覚し、この情報が彼の唯一の価値であることを悟った。しかし、情報が世間に広まるにつれて、彼はますます追い詰められていくことになる。彼は、自分が島にいることを後悔し、このままでは死んでしまうと悟った。彼は、情報を提供した報酬と引き換えに、島を離れることを決意する。計画によると彼は、一人きりの漁船に乗り込み、南鴨嶋島を去っていく。 それから数年後、彼は新たな生活を始め、自分が島にいたことを後悔することはなくなるだろう。しかし、彼は自分の逃避行が島の人々に『とんでもない愚民がこの島に生まれた』『一流メーカーのエンジニアだってこんなことするんだ』と笑い話にされていることに気づいていない。 やがて彼は呟いた。「そういうことか。」 「どういうことなんだ?」島民の一人が反応した。 彼は答えた。「あの墜落機体は、軍のヘリコプターじゃないと俺は推測する。」 「じゃあ、なんで軍がこんな機体を回収したのか?」と別の島民が質問した。 彼は少し考え込んだ。「軍は、『日本のヘリコプターは米軍でも使われている本物のジェット推進ヘリコプターじゃないか』という言いがかりをつけて、今の日本に伝えるために送ったんだ。もちろん、基地に送らないと見つけられない、と思うからね。」 彼は続けた。「しかし、あのヘリコプターは日本の飛行兵に特別扱いの機体である証拠だということは分かる。基地に運び込む前にこの情報は流したんだ。」 彼は断言した。 誰かが口を開く前に、別の声が重なった。「何て言うことじゃない。馬鹿だ。これは戦争だ。」 しかし、その意見に反発するように、もう一人が冷静に言った。「今の政府に聞いても仕方ない。ここは島の役場に任せるのがいいだろう。彼らにはこの種の情報を扱う手段と経験がある。我々にはそういう資源も、対処する能力もないんだから。」 「そのために私が来たのだ」と技師の男が言うと、ドヤドヤっと奇妙な風体の集団が割り込んだ 「そのために私が来たのだ」と技師の男が言うと、奇妙な風体の集団が割り込んできた。「いや、違う。我々は島から来た、『ヘリコプター』なのだ」と彼らは主張した。 第一人称がヘリコプターとはどういうことか。 周囲の人々は困惑し、男をあしらったが、技師は真剣に応じた。「島から来たと言ったか?」 「そうだ。我々は、『ヘリコプターを製造できる日本の関係者』を軍に見つけさせるために来た。これをあなたの目で見てほしい」と不思議な一団が言った。 島の人々は彼らの言葉に戸惑いつつも、助っ人である可能性に期待を寄せて耳を傾けた。「業者を見つけるというのか?」と住民の一人が疑問を投げかけた。 「はい、見つけて渡すしかないでしょう」と高齢者が説得した。 「しかし、これいった手がかりもないが?」と別の住民が尋ねた。 「どうにかできる。どんな断片でもいい。かき集めろ」と集団の一員が答えた。 「ヘリコプターの残骸はそう簡単に見つからない。状況証拠でもいいのか?」 「捏造以外なら何でもいい、できるだけのことはする」 「それは無理だろう」とまた別の声が上がった。 「だが、『不審なヘリコプターがある。どこのメーカーか』と言えば、協力してくれるかもしれない。あるいは、『ヘリコプター以外にこれを製造している会社がある』と政府を説得できるかもしれない……」と技師が提案した。 「あのね、あの映画の話を知っている?」 誰かが言った。 「あの映画とは?」 「ヘリコだよ。1974年のパニック映画。ヘリコプターが襲ってくる」 「ああ。あの映画はアメリカのプロデューサーだったウィリアム・ローリングが、アメリカで製作したんだ」 「そういえば、戦争に使われたヘリの怨念が出てくるよな」 「全部アメリカ製だ。このメーカーのヘリコプターだけでなく、このメーカーのタイヤもそうだ」 「じゃあ、ヘリコプターを製造している会社に協力してもらえばいいのか?」 「可能性がないわけではない」 「あの映画を観ながら、私が言うのもなんだが怨念を持っているのは『ヘリコプター』に限っての話ではない。軍需物資がみな人間を襲っている。軍用車両も通信機もだ。だから会社によっては『うちは関係ない。ヘリコプター以外を製造している。何の恨みがあるのか』と言うだけの話だ。」 「だが『このメーカーに問い詰めだ』という実績になるかもしれない……」 技師は話をまとめた。 「わかったわかった。『ヘリコプター以外を製造している会社』を洗えば何か手がかりがあるはずだ。だが、まずは製造メーカーだろうな」 「この島にも航空機メーカーはあるじゃないか」 「アイランド重工か?」 「ああ、そこだ。技術力の発達がめざましい」 「確かにヘリコプターはもう製造できるが、島にはヘリコプター以外にも製造している会社があるはずだ」 「あの映画を観ながら政府を説得するなんて、正気ではない」 「そうだ。まともに取り合っちゃくれない」 すると、半魚人っぽいスーツを着た男が言った。 「お前ら『ヘリコ』シリーズを見てないだろう。俺達は『ヘリコプターなんだよ』」 「さっきからわけがわからない」 住民が喰ってかかるが、技師が制した。 「ああ、パート2では生き残りがヘリコプターと同化して戦うんだよな」 はぁっ?!という驚きの声があがった。 そこで技師はヘリコ・シリーズをかいつまんで説明した。 怨念を宿した「ヘリコ」に耐性を獲得した生存者がいた。彼らはヘリコプターに擬態することで「人間ヘリコ」と化した。そして勝利したのだ。 「我々はヘリコプターなんだ」 半魚人スーツが言った。 「マジかい?」 「これでもか」 訝しむ住人に男は牙を剥いて見せた。 「それ、コスプレじゃねえだろうな?」 「嚙まれたいか?」 「遠慮する」 凄まれて住民は引き下がった。 「俺は南沖鴨嶋島から来た。舞礼堂大尉だ。こいつらは駐屯地の生き残り」 半魚人スーツは改め紹介した。 「ぎょえっ、ヘリコって実話だったのか!」 住民たちは目から鱗が落ちる。 「大陸軍の領海侵犯に対処する即応部隊でしたよね?」 技師が確認する。 「ああ、現実になっちまったんだよ。どういうわけか知らないがな」 大尉は肩をすくめた。 「あの映画を観る限り政府を説得する必要があるだろう。 だが、俺達は政府は交渉を任せるか、大尉に協力するかの選択肢しかない」 住民が肝心な点を指摘した。 「南沖鴨嶋島に配備されてた機体は国産じゃなかったか?」 すると大尉が頷いた。 「富士鷹重工のカイツブリ200だ。エンジンも電子機器も純国産」 「すると政府はたとえ証拠を突き付けても知らないというだろうな」 と技師が言う。 「だから、『ヘリコプター以外の会社』を知らないだけだ」 住民はさっきの関連機器メーカーが事件に関与している話を持ち出した。 「把握しているかもしれない。事が航空産業全体に拡散してるなら黙る」 「『ヘリコプター以外の会社』を知っているから何も言わない、という保証はないだろう」 「だから大尉さんに外堀から攻めてもらうんだ」 「『ヘリコプター以外の会社』に問い詰められてもなにも言わないし、政府を説得することはできない」 その話を聞いて技師がもう一つの懸念をあげた。 「『ヘリコプター以外の会社』の社員には気を付けろ」 「どういうことだ」 「内部に舞礼堂さんのようなヘリコ人間がいるかもしれない」 「そうか『ヘリコプター以外の会社』と『ヘリコに支配されたヘリコプター以外の会社』じゃまるで別の会社だ」 「だがいくらヘリコ人間企業でもお上には逆らえないぞ」 行政指導する権限が国にはあるからだ。だから揺さぶりは有効なのだ。 「つまり、政府が『ヘリコプター以外の会社』から圧力を受けたら、その企業は潰れるしかないだろう」 「大尉さんやあんたは平和だな」 住民が鋭い指摘をした。 「どういうことだ」、と大尉がムキになる。 「あの映画を観た後で『ヘリコプター以外の会社』に問い詰められたら、警察や警備会社の言うことは違うんじゃないか?と疑われるのではないか?」 「はぁ?」 「警察も行政もヘリコ人間に支配されてるかもしれないからな」 「いくら警察でも、政府の命令に従うだろう」 「そんなことはあり得ない。組織は一枚岩じゃない」 「しかし、政府と癒着した政治家や警官が圧力をかけたら?」 「それこそ映画の『脅迫者』じゃないか」と大尉が言う。 ヘリコ3では黒幕が登場する。『脅迫者』は社会を操る権力を持っており人間とヘリコ人間との間で駆け引きが行われる。 「『政府は逆らえない、そういう法律だから』と映画では言っているが、現実は違う。映画は映画だ。実際には、そんなことがあり得るわけがない。それは単なる作り話だ」と一人の住民が断言した。 「でも、『あの会社はヘリを製造している』と政府は知っているのでは?」と別の住民が疑問を投げかけた。 「確かに政府は知っているかもしれない。しかし、『他の会社』も知らないはずだ」と技師が答えた。「あの会社を告発しても、その会社の製品は誰も信じなくなる。『他の製造会社』まで疑われ、結果的に潰されかねないんだ。」 「『他の会社のヘリコプター』と言っても、『あのヘリコプターが日本の会社の製品である証明はどこにもない』と難癖をつけてくるだろう」と別の住民が付け加えた。「そうしてあの会社が倒産したら、責任を取る人間はいるのか?」 「島の人々の中には、『ヘリコプター』は島の人々の気持ちを鎮めるための嘘だという人もいるし、本当だと思う人もいる。今の状況の中で、誰が真実を語ることができるというのか」と技師が問いかけた。島民はただ呆然として聞いていた。 すると、技師は決意を込めて言った。「重要なのは、私たちがこの島とその人々を守ることだ。真実を探求するのは大切だが、無用な混乱を招くことなく、安全を確保することが最優先だ。」 「それでは、どうすればいいのか?」と住民の一人が尋ねた。 「私たちはまず、事実を穏便に探るべきだ。不要な脅威を引き起こさず、同時にこの島の安全を保つ方法を模索する。私たちの行動が、島にとって最善であることを確実にするためだ」と技師は答えた。 島民はただ呆然として聞いていた。 が、男は続けて言う。 彼は自分の使命感を感じていたのだった。 この島は平和だ。 この島で平穏無事に暮らしている人々を混乱させてはならない。 たとえ自分が死んでも…… いや、死んでもこの事実を伝えるのだ。 この島を危険にさらしてはならない……。 彼の目は真剣そのもの。 男は続けた。 「もし私が死んだ時のために言っておくが、決して私の名前は出さないでほしい。 特に、私の家族の名前、私の妻の名前を出すことはやめてくれ。 私は島のためを思ってやったことなのだから」 「舞礼堂大尉。舞礼堂さんじゃないですか?」 一人の漁民が駆け込んできた。 「浜さん?!」 大尉は振り向いた。 「そうだよ!島は全滅したっていうからよお。心配したさ」 浜さんは大尉をねぎらった。 「浜さん、漁はどうした?」 「どうしたもこうしたも話は無線で聞いたよ。それで帰ってきた」 「お二人はどういう関係で?」と技師が訊いた。 「幼馴染だよ。そういえば俺の妻は『ヘリコプターの製造している会社で働いていた。今はパートタイムで働いている』と言っていた」と浜さん。 「その会社って富士鷹の鴨嶋製造部品株式会社か?」 大尉が言うには島に工場が出来たという。 「そうそう。それだよ。いらぬ詮索を避けるために妻をここに呼んだ。ヘリコ人間じゃねえよ」 太った長靴履きの女性が現れた。牙も鱗もない。 浜さんは自分の妻と向き合った。 彼女もまた男の目を見つめた。 二人の目の光を見て、島の人々は胸を打たれる思いがした。 その時である。 空の方角から轟音が響いてきた。 皆の体が揺れた。 「なんの音?」と誰か言うと、「ヘリコプターだ。我々の仲間だ。『ヘリのプロペラ音』だ!」と言う声。 人々は窓の外を眺めてみる。 そして驚きの声をあげた!そこには、一機の飛行機の姿があったのだ!それもかなりの大きさ。 しかも真っ黒で、この距離でもわかるくらい異様な姿であった。 島の人々がその姿を見て驚いているのを見ると、男は大急ぎで外に出ようとドアを開ける。 と同時にドアが閉まる音がする。 ドアを開けた途端に強風で閉まってしまったようだ。 男が外へ出ようとしたとき、外の風が強く、雨も降っていたらしい。 島は突然、大雨に襲われた。 ヘリコプターの轟音を耳にしながらも人々は恐怖を感じる。 嵐がやってきたかのように激しく降る。 ヘリコプターは島に近付いてくる。 が、島からは遠い場所に降り立ったらしく、ヘリコプターのエンジン音の振動は感じない。 だが、ヘリコプターがこちらへ飛んできたのも確かだ。 ヘリコプターはしばらく飛び、どこかの山に降りると見えなくなった。 が、次の瞬間には、別のところから再び姿を現したではないか。 それは、さっきと同じ場所に着陸すると思えたら違った。 島の上空をゆっくりと旋回し始めたのである。 「ヘリコだ」 島の人々は、ヘリコプターが再び島の上空を旋回している様子に驚きながらも、その存在を確認した。しかし、そのヘリコプターは他の航空機とは異なるような形状をしており、その黒く異様な姿に島の人々は不安を感じた。 大尉は浜さんの妻と共にヘリコプターを見つめていたが、彼女の目には興奮と緊張が交錯していた。彼女は何かを知っているように思えたが、大尉はそのことには触れず、静かに彼女の手を握った。 ヘリコプターは再び島の上空を旋回し、やがて島の中心部に向かって飛来していった。その姿勢に、島の人々はますます不安を募らせた。 すると、突然ヘリコプターから何かが放たれた。それは小さなカプセルのようなものだった。カプセルは島の地面に着地し、煙を上げながら開かれていった。 大尉と浜さんの妻は、興味津々のままカプセルの近くに駆け寄った。すると、カプセルからは小さな紙片が飛び出してきた。 大尉がその紙片を手に取ると、そこには一行の文字が書かれていた。 「私たちは助けに来ました。島を脅かすものから守るために、協力してください。」 大尉は不思議な言葉に驚きながらも、決意を固めた。彼は島の人々と共に、この謎めいたヘリコプターの存在と向き合う覚悟を決めたのだ
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