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今日の自分に自己嫌悪しながら帰宅した私の牢屋は、相変わらず薄暗い。
「ただいま。疲れた」
別に返事や労いの言葉なんて無いけど、いつも大体、独り言と共に電気を点ける。パッと明るくなった玄関。リビングに向かわずに、手を洗うなり二階の自室へ向かう。またしても真っ暗な空間が私を迎える。電気を点けると、ホッとする。私の好きで溢れた、私だけの空間。私だけの時間。十畳の、私の城。
「[[rb:千花>ちはな]]ぁー! ご飯よー!」
一階から私の名前を呼ぶ声で目が覚める。
いつの間に寝ていたのか。出窓から覗く空は暗い。
一階に降りると、父親も帰ってきていた。テレビから溢れてくる音。隣の県の殺人事件の話。
「物騒だなぁ…。千花、気を付けるんだぞ」
読んでいた新聞から目を離して、父親が言う。私は「うん」だか「ふん」だか聞き取れないような返事をして台所に向かった。
「このからあげ、チンするの?」
「あっ、忘れてた! ごめん、千花、チンして!」
「うぃー」
配膳の為の盆に乗り遅れたお総菜が一つ。私の大好物の唐揚げ。惣菜は唐揚げに限ったことではない。
共働きの為、両親の帰宅は遅く、晩御飯は大体がお総菜だ。平日のみならず、土曜日も例外ではない。お米は朝御飯の残りを温めて、味噌汁も以下同文。その他のおかずが、大体出来合いのお惣菜だ。
取り立てて不幸だとか、かといって、絵に描いたように『幸せな家庭』でもない、我が家。平凡。平均的。ありきたり。そんな毎日に、別に嫌気が差すことはない。だって、この家族に私は、何も期待していないもの。
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