1話

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 怜とは違う、少し香る煙草の匂いと、それに絡み合っている官能的な魅力を放っている香水の匂い。  オリエンタル系か。良い意味で眩暈を覚える。このような刺激は私には、まだ早いと思う。  教わりながら焔と一緒にパフェを作った。その隣で同じくパフェを作る怜の顔を時々見ると、口元がムッとしたような感じに見えた。若干怒っているように感じ取れる。  怜はそんなにも私へ作り方を教えたかったの……?     怜の気持ちが分からないままパフェを作り、数分ぐらいで完成した。今いる2人とこの店のオススメである、狐稲夜の抹茶パフェを美味しくいただく。  狐の形をした焼き菓子と鳥居の焼き菓子がパフェにあるアイスに刺さっており、見た目も可愛らしかった。  パフェを食べながら私は、ふと気になっていた事がある。この茶屋へ来た時に怜が私を抱きしめてきた事、先ほどのパフェを作る際の、焔が私にしてきた教え方の態度。わざわざ後ろから教える必要があったのであろうか。  作っている時に私は"そこまでしなくても"という意味で、焔の顔を下から見上げたが彼は「なんだ?」「どうした?」と明らかに、意図的に私が思っている気持ちを、理解しているような返事の仕方をした。  なんで、怜と焔は私に対してこれほどに距離が近いのか気になるが、私の自意識過剰もあると思ったので考えるのをやめた。
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