1話

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   パフェを食べ終えてから夕方まで、2階の自室で過ごした。  丸窓から外を眺めると、この茶屋の前は見晴らしがよい為、朱華市全体が良く見える。金と紅が混ざり合った空に、柔らかい赤みを帯びた日差しが町を包みこんでいく。  夕日も良いが、この町は日本で1番美しい唐棣色(はねずいろ)の夜明け空が見られることから、朱華市という名前になったというのを、どこかで聞いた事があったので、明日になればそれが見られるのではないかと、私の心が躍った。  ふと、そんなことを思っていると部屋の外から、軽く扉を叩く音がしてきたので私は「はーい」と短く返事をして扉を開けた。 「今から朱華稲荷神社へ用事がありますので、外出してきますね」  廊下にいた怜がそう言う。焔と2人で行くのだろうか? 「わかりました。行ってらっしゃい」  特に何も思わなかったので、短く返事をした。後に私は丸窓の下に置かれている机に向かい、椅子へ座り机の上にあった本を読もうとしたが、過ごしやすい季節の暖かさで、睡魔に誘われて深い眠りについた。
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