1話

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「(死ぬッ⁉)」  私は咄嗟にこのどうしようもない状況の中、せめて首を切られたくなかったので、両手で首を守った。  その刹那、私の鼓膜を引き裂くような激しい音……金属のぶつかる音が耳に入ってきた。それと同時に、視覚へ入ってきたのは…… 「……き、狐?」  詳しく言うと、"狐"ではなく"狐の耳を付けた人間"である。 「間に……合って良かったです!」  狐の耳を付けた男?は、そう言って両手で握っている刀で、影の武士の刀とぶつかり合い、力比べの状態になる。  しばらくせめぎ合い、狐耳の男が優勢となり、そのまま武士を蹴り飛ばす。その後、私の方へ振り向き顔を近づけ…… 「大丈夫ですか?」  この聞き覚えのある声は…… 「怜……さんッ⁉」  彼の柑橘系の香りに、その声ですぐに分かった。が、特徴的な狐面が無く初めて見る怜の顔だ。  少年のようで中性的な美しい顔つきだが、無気力さと冷たさを感じさせる目をしていて、クールさが印象的だった。頭には、狐の耳が生えており、私から見て右側の狐耳には、稲荷神社の狐が咥えている玉を、モチーフにしたようなアクセサリー(ピアス)が付けられており、服装も茶屋にいる時のではなく、神職の人達が着るような和装で、首には腰まで長いスカーフが巻かれていて、先が紙垂(しで)の形をしている。  そして、狐耳だけでなく、腰から尾も生えていた。普通の尾とは違い、先端が青い炎……?となり淡く揺れ動いている。 da5bc4f9-5098-4bac-af3f-e014bd6b177e
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