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「そうです、僕ですよ。貴方が無事で良かった……」
彼は、赤と黄の非対称な色の瞳で私を見つめる。
「怜さん。怖かったです……でも、これは何? 私は嫌な夢でも……」
「しっかりしてください。夢ではないですよ! 説明は後でします。今は身を隠すか逃げてください」
先ほど、怜が蹴り飛ばした影の武士はすでに、また馬へ乗りこちらへ向かってきている。
「くそ。早いッ! 僕の力だけじゃ間にあわ……」
怜が「間に合わない」と言い終わる前、私を力いっぱい守るように抱きしめた。その時、私と怜の目の前に
「悪いッ! 遅れた。嬢ちゃん、怜、大丈夫か⁉」
大きい声を上げながら、焔が夜の暗闇の中から青い炎に包まれて、突然と現れた。
「焔さんッ⁉」
私が驚き、焔の名前を呼ぶだけではない出来事が、次におこった。
焔が自らの狐面を片手で掴み、横へと投げつけるように外すと同時に、放り投げられた面と焔自身が一気に青い炎で包まれた。その次の瞬間……
今の怜と同じような姿をした狐耳と尾がある焔が現れる。今は彼の後ろ姿しか見えない。
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