1話

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 焔は"何もない目の前の空間"に向かい、両手で刀を掴み、斬る動作をすると、彼が出てきた時と同じ炎が両手を包み、刀の形を表すように燃えると手元に実体化した刀が握られる。  馬の上から武士が刀を振るってくるのに対して、焔がそれに対抗するように自分の刀をぶつける。 「ほ、焔さんッ‼」  さすがに生身で馬の速さと力には、かなうはずもないので、私は叫んだ。金属と金属が激しくぶつかる甲高い音が耳をつく。 「――ッ‼ 大丈夫だ、嬢ちゃん……俺と怜は見ての通り、人間ではないから……そう簡単には、やられない……ッ‼」  焔が言い終えると同時に、武士を打ち負かす。相手が消えた事を確認した焔は、私と怜の方へと振り返る。  その姿、怜とは真逆な印象であり、瞳の非対称も同じ色だが、左右逆だ。ふわりと柔らかそうな癖のある、髪型で色気のある大人っぽいツリ目。頭から生えている狐耳には、怜と逆側に稲荷神社の鍵がモチーフであると思われる、アクセサリーが付けられていた。  服装は、怜がきっちりと真面目に着ているのに対して焔は、胸元まではだけており、だらしがない。首元には鈴のついた赤い和柄のチョーカーをしている。 「ったく。(うつろ)の奴らが嬢ちゃんを襲うなんて、聞いてねぇぜ」 「えぇ、本当に焔の言う通りです。焔、助けてくださり感謝します。彼女への説明は後にして、今は安全な所へ行きましょう」   「あぁ。そうだな」  2人が会話をしている時だった。再び黒き影が自分の真後ろにいるとは気が付かず…… 「――ッ‼ 嬢ちゃん!」  怜と焔は、目を丸くして驚き私の方へと手を伸ばすが"影"は、私を勢いよく包み目の前が真っ暗になった。
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