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 これは私が小学生の頃に経験した、ある日の記憶…… 「うぅ……お母さんどこ~?」  家から少し離れた山にある、大きな神社へ私は来ていて、さっそく迷子になり泣きながら母を探した。  ハイシーズンの観光時期であり、周りは美しい赤色や橙色、黄色の紅葉に包まれている森林にも関わらず、人が1人もいない。  誰もいない、美しくも静かな森林に恐怖し私は泣く。朱色のたくさん並ぶ鳥居を潜り抜けて、奥へと足早に進む。  しばらく歩いていると道脇の茂みから、1匹の真っ白い狐が勢いよく飛び出してきたので、私は驚き地面へ尻もちをついた。 「……痛い。狐さん? いきなり飛び出たら危ないよ」  私は返事をしない狐に話かけた。  狐は黄色の瞳を縦に細め、じっと私を見てきて、大きく口を開き欠伸をすると、再びこちらを見てくる。 「も、もしかして。帰れる道とか教えてくれたりしないかな? 動物だし、それは無理だよね……はは」  人間の言葉など理解ができるはずもない。と分かっていながら、つい話かけて苦笑する。 「コンッ!」  理解ができないはずの狐が、まるで私の言葉を理解したかと思うようなタイミングで鳴き、私の横を抜けるように後ろの鳥居へ向かい、走り始めた。 『……こっちだよ』  そう隣を走って抜けていくときに、聞こえた気がした。 「……ま、待って! そっちは私がさっき来た道じゃない」  本当にそちらの道が正解なのか、私は分からないまま、白い狐を追いかけた。   空からは、霜月(しもつき)に相応しい立派な紅葉が舞い落ち、私をその道の奥へ誘うよう、風に流されていった。 ea6ff33d-eff0-4985-b24d-5e7c6ec38226
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