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「えっと……そこにある泡立て器で混ぜれば良いのですか?」
「……えぇ。そうです、もしかしてホイップクリームを作った事がないですか?」
「はい……ないです、すみません」
私は申し訳なかったので謝る。
怜は「気にしなくても大丈夫です。僕の真似をして、混ぜてみてください」と言い、もう1つ用意してある容器を持ち、混ぜ始めた。私もそれを見て動きを真似するが、どうもぎこちない。それを隣で眺めていた焔が口を開く。
「嬢ちゃん。円を描くように動かすと、疲れちまうぜ。左右に動かす感じで、かき混ぜるんだ」
「こ、こうですか?」
私は焔の言った通りに泡立て器を動かすが、未だにぎこちない動きをしていた。
「ははッ。本当に作ったことない感じだな。ついでに混ぜる時は、ボウルが斜めになるように持って、素早く混ぜると良いんだ」
そう伝えてくれた焔だったので、私はボウルを斜めに持ち替え、混ぜるのを再開しようとしたタイミングであった……
温かいぬくもりが私の背中に伝わる。焔が私の後ろから、両手を出して作り方を教えてくる。この、抱きしめられているような、甘い場面に気を取られて、集中ができない。
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