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2021年11月28日
ぱんぱかぱーん
ぱぱぱぱぱーん
競馬のとき流れるあのBGMに曲名はない。
啓介の父親が好きで土曜日と日曜日にはテレビやラジオからよく流れていた。
誰もいない家にその音楽が流れることはないだろう。
啓介はそう思っていた。
啓介はテレビは見ないようにしている。
自分の死を求められることが多いから……
Twitterも見ないようにしている。
謎の正義論を唱える人が多いから……
【自分なら自殺しますね。
世界のために死ねるなんて誇らしい。
どうせ自分なんて生きている価値ないし】
これが今、一番いいねがついているコメントだ。
啓介を同情するTweetもあるものの。
それは数が少ない。
命の価値とは……
自分が死んで誰か悲しむのか。
みんな喜ぶのなら……
自分に生きている価値はないのではないのか。
それならどうなる？
するとスマホが唸る。
そして動画が始まる。
すると例の男の姿が映し出される。
「橘啓介は、まだ生きているようだな。
次なる司令を送ろう。橘啓介に絶望を味あわせてはいけない。
絶望を合わせた存在はこうなるだろう」
男が指を鳴らすと映像が切り替わる。
そこには啓介の家族が映っていた。
家族は何かを言っている。
何を言っているのかわからない。
そして次の瞬間燃えた。
「啓介！すまない」
父親のボソッと言った言葉だけが全国に流された。
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