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「……うん。貴方が良ければ」
「僕は別に。父と一臣に会うのは何の問題もないし」
「……普通の家だったら、そういう時お嫁さんがおせち料理でも作って持って行くのかもしれないけど、悪いね。あたしはそういうんじゃなくて」
夫はきょとんと私を見て、笑った。
「それは、きみが悪いんじゃなくて、僕がやらせないからだろう。……むしろ、実家に顔を出すとか、僕が考えの至らないことを言い出してくれる方が助かるし、父と一臣はきみにそんなことは求めないだろう」
確かに。
私に求められてるのは、ただこの人が少しでも幸せに居られるように寄り添ってあげることだ。
――――と、今だから分かってきた。
お茶を飲み終わると
「淹れようか?」
夫が言った。
「うん。ありがとう」
椅子から立ち上がりながら、彼は独り言を呟く。
「……そうしたら、後で電話して、持って行くようなら少し多めに煮物を作って……」
「……気に入るか分からないけど、下ごしらえくらいなら手伝おうか?」
考え事をしていたからか、少し間があって
「ごめん。何か言った?」
「……気に入るか分からないけど、野菜の下ごしらえとか出来ることあれば手伝おうか、って」
「ありがとう。じゃあ、頼むよ」
彼は笑って言った。
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