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彼は笑って言う。
「そうだね。考えるかも知れない……でも、分かった。きみがそこまで言ってくれるなら、やらないよ。勝手なことはしない」
「……ん」
突然変なことを言って怪しまれたかなと思ったけど、彼は少し嬉しそうな柔らかい笑みを浮かべるだけで、それ以上何も言わなかった。
……多分、私の気持ちがこの人に向いてる実感があれば、安心できるんだろうな。
この人のお母さんも、病気は避けられなかったとしても、義弟の言ったように家の環境が違えばこんなことにはならなかったのかもしれない。
「さて。……今日は、夕飯は何にしようか。正月前だと思うと、特に食べたいものも無いねえ」
急に、主夫の顔になり、夫は言った
私は、考えて答える。
「たまには、外でも食べに行く?おせちの用意とか、あるだろうから」
「……それもいいか。片付けなくていいし……そういえば洗濯物は」
「あ、ごめん。まだ」
「じゃあ入れてくる」
「ごめん。ありがと」
と一応言うけど、これも人に手を出されるより自分でやった方が気に入るからなんだけど……まあ、いいか。
やってくれるんだから有り難いと思っておこう。
「それじゃ、これ片付けておこうか?」
「いいよ。そのままで。ガラスは綺麗に洗わないと曇りが出るから」
「……はい」
ひとりになったリビングで、残りのお茶を啜りながら考える。
あの話は、当面は保留にしておこうと義弟と決めた。
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