無自覚なカウンセリング

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自分自身には全く非がないのに、深く傷付いてトラウマを抱えて、この人は生きてきたんだ。 私はそう思う。 でも、そろそろ立ち直るべき時が来たのよ。 私と彼が出逢ったのは、きっとこの事を彼に伝える為だ。 実際のところ、カウンセリングがどんなものか私は知らない。素人だもの。 でも、話したくなった時に、話せる相手がいたら、それがその人にとってのカウンセリングなんじゃないかな。 将来に希望が持てず、精子の凍結保存までしている彼を、救ってあげたいと思うのは私から彼への愛情。上から目線で言っているわけじゃないと言う事をわかって欲しいけど…伝わったかな…。 「…俺はやってない?」 「うん。」 「…俺は幸運だった?」 「うん。そうだね。 危機一髪、間違いを犯さず済んだね。」 「……………そっか。」 そう言って、寿貴先生は静かに涙を流した。 きっとその涙は、今までの彼の苦悩を流してくれる。 私はそう思って、ゆっくり彼を抱きしめた。
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