桜川産婦人科病棟での出会い

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「…君に言われなくても、それくらいわかっている。 ……美咲。 俺は別にゲイじゃない。 いつも言ってるように、女は苦手なんだ。 ただ、俺の患者は別だ。 目的がはっきりしていて、みんな……真剣に子供を望んでいる。 何を考えているかわかる。 ……その紙袋に入っている人達は、きっと俺の肩書きしか見ない。一緒に生活していけるとは思えないんだ。 正直、そんな女達のために、時間を割きたくない。それなら研究室に篭っている方がマシだと思ってしまう。 それでは、会うのも失礼だろう?」 「お兄ちゃん…」 「だから、葛城のババアには、断っておいてくれ。逃げているわけじゃないんだ。 俺は、最初から会わない方が誠実だと思う。」 最初から会わない方が誠実…。 なるほどね。 確かにそうかもしれない。 こんな顔良し。頭良し。 おまけに身長まで高い。 多分、うちの父と変わらないだろう。 医師で、センター長までされていて、スペック高過ぎの人がお見合い相手として来たら、どんなお嬢様でも、舞い上がってしまうだろう。その気もないのに会ってしまえば、きっと相手の方は期待してしまうだろう。 うん。 会わない方が誠実だな。
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