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Sヒルズタワーの1階に松寿庵さんは入っている。
ここに入れるのは、名だたる銘店のみ。
松寿庵は創業200年を迎える老舗高級和菓子店。
江戸時代から受け継がれた古き良き日本の文化を継承している、世界に誇れる銘店だ。
銘店街の中でも、一際風格を放っている。
「こんな銘店と、提携させていただくなんて、考えただけで身震いがするわ…。」
松寿庵さんの正面に立ち、お店の看板を見上げる。
朝倉にとっても、松寿庵さんにとっても、このままいい関係性を築いていきたい…。
「あ、花ちゃん！
いらっしゃい。お待ちしてました〜。」
松村さんが、にこやかに迎えてくださる。
和装の松村さんは、この前までテレビドラマで和菓子屋さんの若旦那の役をしていた俳優さんにそっくりだ。微笑むと現れる目尻のシワは、これからさらに男として円熟味を増していくであろうことを感じさせている。
早い話、色気がダダ漏れなのだ。
大変経験不足な私にまで、色気を惜しみなく垂れ流してくださっているのだけれど、勿体無いよ？と、言ってあげたくなる。
色っぽいお話が成立する女性に、その視線は向けるべきだと思う。
いや、元からこういう人なのかな？
『ザ・御曹司』って感じなんだよね、松村さんは。
とりあえず、今日は仕事仕事！
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