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そして今のところ、その判断に後悔はない。
しかし、先程のレオタード姿での奇態といい、“外”と“内”での極端な態度の切り替えぶりといい、まだまだ知らない顔がありそうだ。正直なところ、私はこの男を見極めかねている。
私があまりにもガン見していたからか、男は無表情のまま首筋に手を差し入れてきて、悪戯するようにくすぐってきた。
見た目のイメージに反して彼は体温が高い。指先からの熱がジリジリと肌を侵食していくような気がする。私が思わず首をすくめてもやめてくれない。
道中、男はそのまま私の首筋を弄り続け、摘みあげられたネコのような格好で映画館に突入する羽目になった。ここに来るまでもそうだったが、平均より遥かに背の高い男は周りの視線を集める。モールのエスカレーターを登っている時は対向車線(?)を下っている親子連れの子供から「でかっ!」と無垢な叫びを浴びていたし、今は薄暗い映画館で突然デカいシルエットに遭遇した大人があからさまにギョッとしているくらいだ。
しかし、忘れてはいけないのがこの男、とにかく顔がいいのである。
「あのー、お兄さん1人ですかー?」
トイレを済ませて戻ってくると、廊下で男は女性3人連れに囲まれていた。
彼が手にしている2人分の飲み物とポップコーンを見れば、1人でないことぐらいすぐわかるだろうに。
なんの映画見る予定なんですかあ?私たちなんの映画見るか決めてないんですけどー、お兄さんのおすすめは?このあと時間ありますぅ?もしよかったらお昼ご一緒しません?私たち今日いくらでも時間あるし、あ、別にたかろうとなんてしてないですよもちろんワリカンです、だから、そんなに警戒、しなくても…。
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