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そもそも、この書類を渡してきた彼女とのきっかけは・・・・佑季と日和の結婚式だった。
大学からの付き合いで、この会社の設立メンバーでもある水瀬が1年で産休から復帰した。佑季は佑季で辛抱堪らなくなったのか、結婚の承諾を渋っていた日和を妊娠させたという展開。それならそれで、お腹が目立つ前に式を挙げてしまえということになり、なぜか俺が司会をやることになり・・・・俺一人だと見栄えが悪いからと日和の友達の岡村碧に白羽の矢が立った。
しかし彼女は離婚して間もないから、と最初固辞したらしく、そうなると水瀬か結城かということになり、とりあえず3人で司会をまわせばどうにかなるだろうと思っていたら、式の前日に、まさかの結城家の子供の発熱。とりあえず水瀬だけが式に顔を出したけど、さすがに司会までは・・・ということで、再度、岡村さんがピンチヒッターに指名されたという経緯。ここまでの展開では、岡村さんも断れなかったらしい。
事前情報として、佑季から岡村碧さんがまだ離婚から立ち直り切っていないらしいということや、日和を友達以上に想っていた時期が長かったというような話は聞いていた。どれもこれも、俺からすれば些末なことだったけど。
そもそも、披露宴自体は、たかだか2時間ぐらいのことだし、司会の相方が誰であれ、俺は頓着していなかったし。なんなら、俺一人で余裕で回せるし。どうにかなると高をくくっていた。
実際、殆ど打ち合わせなしのぶつけ本番だったけど、岡村さんとの司会はパーフェクトに近かったと自負している。彼女も仕事でプレゼン慣れしているのか、オーディエンスの前で司会進行するのに、それほどのテライはなかったらしいし。岡村さんの柔軟な対応力が秀でていたおかげで、こちらもフルで盛り上げることが出来た。いまだかつてない、良い披露宴だったと自負している。
披露宴も終わり、日和からブーケを手渡された時だけ、岡村さんは少しだけ泣いていた。その涙の意味は敢えて聞かなかったけど。聞かれても困るだろうし。
日和たちの結婚式は、2次会もなかったから、司会お疲れ様の打ち上げでもするかと佑季に声をかけられた。
ホテルのbarで岡村さんと待っていたら、日和の体調があまりよくないと連絡が入り、俺たちは宙ぶらりんな感じになってしまう。妊婦の体調が1番の優先事項だから、それはそれで仕方のないことだと理解はしていたけど、何となく飲み足りないというか、さすがに披露宴では全然飲めなかったし。
「なんか、今度埋め合わせするって言ってたけど、とりあえず、お開きにしますか?」
先にオーダーしていたアルコールも二人共、空に近かったから、岡村さんにそう伝えた。
「じゃあ、あと1杯飲んだら行きましょう。さすがに、司会で喉渇いちゃったし」
すぐにでも席を立つと思いきや、もう少し一緒に過ごせる時間が出来たらしい。そう思う自分に苦笑する。岡村さんは魅力的な女性で、男ならだれでも一緒に飲みたいと思わせる見た目だったし。相手に不足無し。
「確かにほとんど飲み食いできなかったでしょう?お酒もですけど、お腹は大丈夫ですか?」
もう少し、一緒にいる時間を引っ張りたいという欲が出てきた。
「そう言われてみれば、確かにちょっと空いてるかも」
「店、変えませんか?奢りますよ。急なピンチヒッター受けてもらって、こっちも助かったんで」
「宗像さんお一人でも余裕でまわせたと思いますけどね。私、ほとんど隣にいただけだし」
「俺だけの司会なんて、圧が強すぎて、皆、居心地が悪くなるからって、さんざん言われてたんで。ホント、助かりましたよ」
「役に立てて良かったです。なんか気が抜けたからか、ホントにお腹すいてきたかも」
よし、これはチャンス到来。
「じゃあ、行きましょうか?司会、岡村さんのような方に隣にいて頂いて、ホント助かりましたよ。丁度いい感じになったと思うし」
正直に言う。あの時点で下心が全くなかったと言えばウソになる。
岡村碧は日和の友達という欲目を外しても、かなりレベルの高い女性であることに変わりはなかった。
女性らしいシルエット、蠱惑的な唇、間違いなく美人のカテゴリーに入るタイプ。
男なら誘ってみたい・・・・はい、ただのエロ中年目線です。
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