3枚目

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3枚目

「3枚目なんだけど」 一人呟いてみる。 まぁ3枚のうち、2枚は水瀬から渡されたものだったけど。 俺はどれだけ前世で不徳を積んだんだろうか。 新たに渡された、同じ書類を前に溜息しかでない。 「どうかしたのか?」 ドアをノックしながら、湊が現れた。 社長室は基本、ドアが開いているから、俺が溜息をついている様子を見ながら、コイツはノックしたんだろう。 「サインしたくない書類があって・・・それより日和の様子はどうだ?」 仕事モードの湊にこんな相談できるはずもない。 「日和なら・・・ちょっと悪阻(つわり)が辛くなってきたみたいだけど、どうにかな」 「早めに産休入るか?」 「とりあえず定時上がりで今の所はどうにかなりそうだけど」 「しかしなぁ、湊も父親かよ。水瀬もしっかり母親してるし。残ったのは俺だけか・・・・湊、もし俺が父親になったら、どうする?」 「どうもこうも、普通のことじゃねぇ?」 まぁ、普通のことか。確かに。 「年齢的にも早すぎるってことはないし。そんな話をするぐらいだから、相手は見つかったのか?お前のお眼鏡に適う女性」 そうゆうところは相変わらず鋭いんだよなぁ、昔から。 「既成事実の方が先っていう展開・・・・子供できたって言われた。でも産みたくないらしいんだけど」 その書類を見ながら、俺の秘密をあっさりカミングアウトした。さすがに誰にも言わないでいるのは、それはそれで辛い。 「お前は欲しいのか、子供?」 「水瀬も、お前も、親だしなぁ・・・・俺もなってみてぇなぁ、なんて思わないでもない」 「じゃあ簡単だろ、説得しろ。金でも積んで、産むだけ産んでもらって、お前が育てりゃいいんじゃない?」 「俺で大丈夫か?」 「珍しく弱気だな」 この年齢で未経験の分野に挑もうとしているんだから、いつも通りというわけにはいかないだろう。 「・・・・よし、説得してみるだけしてみるか。こうなったら、将来的に、お前か水瀬の子供と結婚させるもありだな」 そう言った途端、関心がなさそうな顔をしていた湊の表情が変わった。 「ウチは断る」 「なんでだよ?」 「お前と姻戚関係なんてご免だ」 湊は重要と書かれた書類を俺のデスクに置くと、さっさと部屋を出ていこうとする。 姻戚関係ねぇ・・・・それはそれで・・・・イイ感じじゃね? 「柊亜、その相手、今度会わせろ」 会社で下の名前を湊から呼ばれることは滅多にない。 久しぶりだな。 そして湊佑季は、扉のところで振り返らずに一言だけ残して去って行きやがった。 一応、アイツなりに俺のことを心配しているととっていいんだろうか?
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