If~もしも~

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鈴木(すずき)さん。鈴木 眞美子(まみこ)さん、診察室へどうぞ」 「あ、はい!」  乳腺外科前の待ち合いのソファ。  落ち着かないまま呼ばれるのを待っていた眞美子は、看護師の声に立ち上がって診察室へ向かった。 「えーと、鈴木 眞美子さん。……はい、検査の結果は問題ありません。大丈夫ですよ」  優しげな年配の医師の台詞に、知らず緊張していたらしい全身から力が抜けるのがわかった。 「あ、ありがとうございます。……よかった」 「早期発見が大事ですから、今後も検診はきちんと受けてくださいね」  再度担当医に礼を述べ、ドアを開けてくれた看護師にも深々と頭を下げて診察室を後にする。  職場で申し込んで受けた乳がん検診。その結果として、要精密検査の通知が届いたのは一か月ほど前だった。  一瞬目の前が真っ暗になったのを、眞美子は昨日のことのように覚えている。  すぐに検診を受けた病院に精密検査の予約を入れたが、もともと乳がん検診は週に一回とのことで今日になってしまったのだ。  今の時代、がんだからと言って即『死』に繋がるわけではない。医療の進歩は凄まじいものがある。早期発見ならなおさら生存率は高い。  頭ではわかっていても、実際に結果を知るまでどうしても不安が拭えなかった。  この一か月、心のどこかに常に巣食っていた不安を振り切って、眞美子は久しぶりに晴れやかな気分で病院の敷地を出た。
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