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洗面所で顔に軽く水をかけて、気持ちをリセットする。 よし!と気合を入れて席に戻ろうとすると、そこには間宮さんがいた。 トイレとホールの死角に押しやられて、ちょっと驚く。 「ま 間宮さん?」いわゆる"壁ドン"をされたまま、何も言わない間宮さんにしびれを切らして、呼びかける。 「…ごめん。」言葉を一度切って、続ける。 「菰田さんとは、ほんと何もないんだよね?」 「え?」予想外の質問。 「あ あの はい。」 そこからまた沈黙になる。 「あのさ、俺の気持ちきづいてる?」 「…」え?『俺の気持ち』とは? 「あ あの田中さんとの関係…ということでしょうか?」 「え?」今度は間宮さんがはてなになる。 「あの、僕田中さんとも何にもありません…から…大丈夫です。」 きれいすぎる顔面をまじかに感じて、最後は消え入りそうにそう言った。 「あ えっと、もしかして、日置君、田中のこと好きなの?」 「い いえ僕は!」危うく、告りそうになって、息をのむ。 「ていうか、間宮さんと田中さんは、どういう関係なんですか?」 体勢を立て直そうと質問を返す。 「俺と田中?」そう繰り返してくる間宮さんに。こくりとうなずいてから、 「あの、この前の飲み会で、送ってもらった時、間宮さんえっと…俺のおでこに、…あの…キス しました?」 思い切って聞いてみる。すると間宮さんは一気に赤くなった。 「…!え?起きてたの?」 「えっと何となく…。」やっぱり気のせいじゃなかった。 「もし田中さんのこと好きなら、なんであんなことしたんですか?僕が田中さんと仲良くしてるから、いやがらせ的な感じですか?」アルコールの力も借りて、ちょっと語尾が強くなる。 「それは…!」間宮さんがそう言いかけたとき、 「お 間宮さんもここにいたんですね。そろそろ締めますけど」と菰田さんがやってきた。 「わかりました。トイレ済ませて戻ります。」 と間宮さんはにこやかに言った後、 「ちょっとゆっくり話したい」と僕に耳打ちをして、トイレに入っていった。
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