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「二次会どうする?」
店を出たところで、菰田さんが聞いてくる。
「俺は今日はちょっと飲みすぎちゃったんで…」と間宮さんがパスをする。
「日置君はどうする?」と僕の顔を覗き込んで、ウインクする。これは、『お前もパスしろ』ってことだろうな。
「僕もちょっと…すいません。」と申し訳なさそうに頭を下げる。
あとのみんなは、もう一軒いくというので、ここで僕らは別れた。
「どうする?どこかで飲みなおす?」やっぱり、このままバイバイってわけじゃないよね。
「ゆっくり話したいので、僕の部屋でもいいですか?」
「いいの?」なんだかうれしそうな間宮さん。
「はい」
無言のまま家に帰る。
「どうぞ」
「お邪魔します。」
明かりをつけて、暖房をつけて間宮さんを招き入れる。
「何か飲みますか?」
「コーヒーある?」
「インスタントでよければ」
「うん。じゃそれで」
お湯を沸かして二人分のコーヒーを入れて、テーブルに置く。
「どうぞ」
「ありがとう。」
向かい合って座る。少しの沈黙。僕が破る。
「あの…なんでキス、したんですか?」
なぜかコーヒーを眺めながら、柔らかい笑顔を浮かべる間宮さん。
普通なら『キモイ』んだろうけど、間宮さんだとそう思わない。
「好き だからだよ」
え?なんて?
「からかってるんですか?」
「なんで?」
「だって、間宮さんは田中さんのこと…」
「あぁ」そう言って真面目な顔で、僕を見る。
「日置君が何を見て、そう思ってるのかわからないけど、俺とあいつはほんとに何でもないよ。」
「…」
「俺はてっきり、『男が男を好きになるなんて気持ち悪い』って言われるかと思ってた。」
「それは…」僕が責められることじゃない。間宮さんに対して、こんな気持ちになってるんだから…。
「でも、俺も、男を好きになったのは、初めてなんだ。」そう言って、照れくさそうにコーヒーを飲む。
「今までの恋人はみんな女の子だったし」なんだか心臓がうるさい。
「田中と一緒にいても、こんな気持ちになったことなかった。」
「田中さん、きれいですからね。かわいいところもあるし…」
「いや、なんていうか」間宮さんはちょっと戸惑ったようにした。
「もう一回言うけど、俺男を好きになったのは、日置君だけだよ。」と前置きをして
「田中…あいつ“男”だからね」と言った。
「え?」
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