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「さっき初めてじゃないって言ったよね?」
と尋ねる田中さんに、大きくうなずく。
「なんていうか、やっぱ男同士って、そういうのデリケートかなって、一回断ったら、嫌われちゃいますかね?」
「え?それってもしかして、蒼からそういうお誘いがあったってこと?」
思った以上に、驚かれたことに驚く。
「…。えっとその…キス?…されて、その流れでっていうか…」
あまりにも恥ずかしい話の内容と、その時を思い出してしまって、赤くなってしまう。今までこんな相談、人にしたことないし。
「まじで?!蒼からってこと?」
「いやだから声でかいですって…!」
「ごめん。だって、あの蒼から…」
非常に驚いている田中さん。
「あの…田中さんの中で、間宮さんてどんイメージですか?」
「どんなって、もてるくせに全然遊んでなくて、女に迫られても全然気づかなくて、そういうお店連れてっても、照れちゃってんのかなんもしないし、こいつ女にたたないのか?とか思うくらいってかんじかな?」
あっけにとられる。でも男を好きになったのは僕が初めてって言ってたし。
「あ でも男が好きってわけじゃないみたいよ。ゲイバーに付き合ってくれたことあったけど、『無理』って言って1時間もいなかったし。」
なんだかほっとする。そしてもう一つ、この前キスしたとき、何気に気づいたんだけど、間宮さんの中心は、むちゃくちゃ主張してた。だから、僕も貞操の危機を感じたんだし。
「だから、蒼が自分からってなんか想像できなくて…」
いやむしろ、むちゃくちゃ積極的ですが…
「で、日置君は断わっちゃったんだ」
うっ…
「だって、男の人とは初めてだし…」
それに、あの状況では、確実に僕が"女側"だし…。
「あぁ、どう見ても受けは日置君だよねぇ。そりゃ怖いよね。」
と僕を憐れむように微笑む田中さん。
“受け”とは…?
「大丈夫よ。」なぜか、田中さんの言葉は僕の奥深くにがっつりと響く。
軽い一言のように見えるのに、なぜだかほんとに大丈夫だと思える。
「日置君はちゃんと蒼との関係を大事にできてるし、蒼だって拒まれたくらいで、嫌いになったりしないわよ。それに、なんだかとっても愛し合ってるみたいだし。」とウィンクする。
「あ ありがとうございます。」
「少しは気持ち軽くなった?私と飲んでよかったでしょ?」といつもの田中さん節に笑ってしまう。
「まぁ、いいんじゃない?二人は二人のペースでさ。」
田中さん…
「まぁ、たとえ蒼でも、日置君を無理やり、なんてことがあったら、私も容赦しないけどね」そう笑う田中さんは、頼もしくて…かわいかった。
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