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ご飯食べて、かたずけて、お風呂入ったら、蒼さんがわくわくした顔で僕を見る。 はいはい着ますよ。 レストランのほうから、そでを通してみる。サイズはちょうどいい。 まぁ、吉井さんみたいなすごい仕事はできないけど、なんだかわくわくする。 次に、フロントの制服を着てみる。蒼さんとは色も少し違うけど、同じ部署の制服はドキドキ感が違う。でも着てみて思う。 なんか、蒼さんみたいにぴしっと決まらん。 蒼さんが着るとかっこよく決まるのに、僕が着ても「大人の男感」は皆無だ。 「なんか締まらないっすね」口に出してみる。 「なんていうか…」 「高校生みたい…」蒼さんも同じことを思ってたんだ。なんだろうこの敗北感。蒼さんとか、菰田さんみたいな『ホテルマン』を理想としていただけに、何となく、社会人のプライドが凹っとへこむ。 ———ぎゅ 突然抱きしめられて、ハッとする。 「なおとの過去は手に入らない。わかってるけど、やっぱりなおとの高校時代を一緒に過ごせなかった自分が歯がゆい」何を言ってるんだこの人は… 「彼女とかいたの?」嘘の下手な僕に、その質問します? 「…リア充め」何も答えない僕に、そういうと、意地悪な笑顔を見せてから、 一度深くキスをする。それだけで脳がとけてしまう僕。 「制服しわになっちゃうから脱いで…」この人の言葉は、なんでこんなに官能的なんだろう。ただほんとに“制服のしわ”を気にしてるだけなのかもしれない。けど、何となくこの後のをいやおうなしに期待してしまう。 「なんて顔してるの?」僕のほほを撫でながら、やさしく笑う。 僕は、何かにはじかれたように制服を脱ぎ、ハンガーにかける。 スウェットを手に取ろうとすると、背中を指でそっと撫でられる。 ゾクッとして、体が少しこわばってしまう。 「…蒼…さん」振り向いたら、蒼さんが目を見開く。 「…なんて顔してるの。」 え?僕どんな顔してるの? 「なおとは、ずるいね。」 そういって僕をそっと抱きしめる。肌に直接蒼さんの体温を感じて、心臓が早くなっていく。 「俺も、やっぱり健全な男子だなぁ」 そう言った後、僕の首筋にチクりと小さな痛みが走る。 「ごめんなおと…いい?」 体にあらがえない脳からの指令で、僕は首を縦に振ってしまう。 「できるとこまででいいからね。」蒼さんの優しい声が、耳に直接流し込まれた。
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