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         —田中と俺— 「蒼」 「ん?」 「日置君てそんなにの?」 「は?」 田中は何でもダイレクトだ。男だった時からそうだ。 見た目も心も女になったけど、やっぱり田中は田中だ。 「まだやってないし」 田中には、着飾ってもしょうがないから、俺もダイレクトに答える。 「なんだぁ」 「ったく、なんでそんなふうに思ったんだよ」 「だってぇ、あんたむっちゃエロい目で日置君のこと見てるからぁ。」 はぁ? 「いい男が台無しよ。」 この前、直人と飲みに行ったのに、やったかどうか聞かなかったのか?さすがの田中も直人には遠慮したのか? 「あんまり下心丸出しだと、怖がられるわよ。どうせ、は日置君なんだろうし。」 田中に言われて、ちょっと気をつけなきゃと思う。直人に怖がられて、触れなくなるのはいやだ。 っていうか、田中から"受け"とか言われると現実味が半端ない。 「田中はその…どうなの?」ちょっと気になって聞いてみる。俺だって男となんて初めてだし、ネットで調べても男同士はかなりデリケートみたいだし。 「え?ねこかたちかってこと?」 “ネコ” “タチ”…生々しいな 「あ…あぁまぁ」 「私はもちろんねこちゃんよ」ニャンとねこのポーズを決めてくれる。かわいいけどうざい。 「そんな顔しないでよ。私だって一応彼の前ではかわいくありたいのよ。」 「大事にされてるなぁ」 「そうよ。蒼も、日置君のこと大事にしなきゃダメなのよ」 言われなくてもわかってる。 「好きな人とする初めては、それだけで幸せだけどね。でもやっぱり気持ちって大事じゃない?」 そう言った田中は、いつもより大人びて見えた。 「うん」何となく、俺も素直になれた。 「やったらおしえてね?また日置君と飲みに行くから」 すぐにいつもの田中に戻る。 「バーカ教えねーよ」 このときはそう言ったけど、後日。 明らかに花開いてしまった直人のせいで、田中にはすぐにばれてしまう。 「こんなにあとつけてぇ。独占欲の塊か!エロじじぃ」 「は 恥ずかしいから大きい声で言わないでください。」 うん。通常運行。
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