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半年ほどして、三沢さんのことも忘れるほどに、順調に生活していた。 「はい広報 田中」 内線を取った田中さんが答える。 「ん?私宛じゃなくて?日置君に?」 ん?荷物でも届いたのかな? 「え?フロント?」 内線に答えながら僕のほうを見て眉にしわを寄せる田中さん。 なんだろ?なんかトラブるかな? 「わかった」そう言ってちょっと不満げに電話を切る。 「何かあったんですか?」 「あのさぁ」 田中さんは、なんか言いにくそうに僕を見た。 こんな田中さんは珍しい。 「どうしたんですか?トラブルか何か?」 あまり好ましくない話なのは間違いない。 「直君さぁ 最近あの三沢っていう女の子からなんか連絡あったりしてる?」 「え?」 久々に聞いた名前にちょっと胸騒ぎ。 「あぁまぁいいや、とりあえずちょっとフロント行こう」 状況が飲み込めない僕に有無を言わせず、田中さんは一緒に来るように促す。 仕方なく僕も田中さんに続く。 田中さんは、バックヤードに来ると一度とまって、僕の肩をつかむ。 ちょっとした緊迫感を覚えて、僕も田中さんを見る。 「直君、実はね、三沢さんらしき女性がフロントに来てるらしいの」 え? 「ごめん、ここまで連れて着といてなんだけど、会いたくなかったらわたしひとりであってくる。」 なぜか申し訳なさそうな田中さんに、 「え?いや僕も行きますよ」と当然の義務を主張した。 だって、僕の問題だし。 何で田中さん…!あ! そうか、あの時彼女のふりをしてくれたから、巻き込んじゃったんだ。 そう分かって、僕のほうが申し訳なくなる。 「あ あの、僕のほうこそ巻き込んじゃって…。」 深く頭を下げる。 「いいのよ、私が勝手に首ツッコんだんだし」そう言って首を横に振ると、田中さんはもう一度僕に確認する。 「ここでたら、もう三沢さんいると思うけどいい?」 僕は、しっかりうなづく。 三沢さんにもちゃんとお断りしなきゃだし。 「蒼いないけど、私がちゃんと守ってあげるから」 田中さん…、男前です。 お互いにうなづきあって、フロントに出る。
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