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ひと先ず帰りなさい。
という、田中さんに甘えて、僕は蒼さんと宿舎に帰る。
シャワーを浴びて、ドライヤーをしてもらって、暖かいお茶を入れてもらって飲む。
かいがいしく僕の世話そする蒼さんにされるがままになる。
「僕、ああいうドラマみたいなの初めてでした」
修羅場と言えるのかどうなのか、まじでコップの飲み物かけられるってあるんだ。とかちょっと俯瞰的に見てしまう。
ていうか、ガムシロもミルクもがっつり入ったコーヒーとか…。
スーツもシミになっちゃうし、べたべただしマジ最悪。
しかも、「ホモキモイ」とか言われたし。
「なんか、ごめんね直人」
確かに、カミングアウトしたのは蒼さんで、僕と田中さんはしっかりほしんしてたのにって感じだけど、あの時の言葉を思い出すと、そんなことどうでもいいくらい、—うれしい—。
「なんか、三沢さんが来てるって聞いたら、頭に血が上っちゃって…。」
いや、そのルックスでその中身なら、どんな相手でも余裕でKOでしょう?
「バカだよね。」自嘲する蒼さん。
「直人のこと信じてるのに、やっぱああいう女の子って感じのかわいい子があんなに熱列に来られちゃうと、やっぱ焦るよね」
「そ そんな!」
蒼さん以外になんて考えられない。
こんな素敵な彼氏がいるのに周りなんて見られないよ。
「大人げないよな…。でも許して」
そっと手を伸ばして、僕の頭をなでる。
心地いい。幸せだなぁ。
こんな幸せを感じられるのは、ちょっと三沢さんのおかげかも…。
「けどマジで、俺との関係知られたことで、三沢さんとかから何かされたら、ちゃんと守るから。」
そう言う蒼さんの目は力強くて頼もしかった。
あぁやっぱり大好き。
「ん?」
じっと見つめすぎたのか、蒼さんが不思議そうに僕を見つめ返してくる。
「あ、い、いや、ありがとうございます…。」
そう言ってうつむいてしまう。
それでもまだ、蒼さんの視線を頭に感じる。
「直人はやっぱりかわいいな、かわいすぎて心配になる。」
さっきとは違う、甘くてとろける声がした。
「ぼ、僕も男なんで、あんまりかわいいって言われても…。」
照れ隠しに反論する。
「ハハ…。ごめんごめん、でもやっぱりかわいい」
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