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そうこうしているうちに、田中さんの彼が到着したらしい。 「田中さん立てますか?」 へーきへーきという割には、うつろな目をした田中さんに肩を貸して、店の外に連れていく。 蒼さんもあとから荷物を持ってきてくれる。 「すいません」 外に出ると、やさしそうな好青年が立っていた。 この人が田中さんの彼氏かぁ。なんか思ってたのと違う。 やわらかい物腰で、ふわっとした髪の毛。目が野の奥ににこやかな目が細められている。 「寿弥(ことや)」そう言って田中さんは、その人に抱き着く。 「薫ずいぶん飲んだんだね」 と優しく田中さんを抱きしめるんことやさん。 「うん、ちょっと飲みすぎちゃった。」 うん、かわいい。 「そうか、こんなイケメンさんたちと飲んでたらお酒も進むね」 ことやさんは僕と蒼さんを交互に見る。 「でも、僕はちょっとやけちゃうな。」 そう言って、僕たちが見てる前で、田中さんのおでこにキスをおとす。 ちょっと驚いて、なぜか照れてしまう。 田中さんはご満悦だ。 「あ、あのいつも田中さんにお世話になってます。部下の日置と申します」 「あぁ、いつも聞いてますよ お世話になります、神尾です」 一応挨拶をかわす。てか、どんな話してるんだろう。 「神尾さんいつもすいません、ついつい飲ませすぎちゃって」 「いいんですよ、間宮さんにはいつも迷惑かけてるみたいだし」 違うタイプのイケメンの並びにちょっと引いてしまう。 なのに、ことやさんは僕のほうを見て、 「なるほど、こんなにかわいかったら、薫がちょっかいかけちゃうのわかります。」 そう言ってから蒼さんに笑いかける。 「あんまり、かわいがってるし、実物見たら余計嫉妬でどうにかなりそうだよ。」 そう言って田中さんを見る。 「わかってるくせに、何を言わせたいの?」 田中さんが見たことないような女の顔でことやさんを見つめる。 今にもキスしそうだ。 「わかってても信じてても心配なの」 寿弥さんの左手が田中さんの腰を抱いて、右手が田中さんの髪をなでる。 なんだかドキドキする。 「すいません。では、お先に失礼します。」 そう言うと、また好青年の顔に戻って、寿弥さんは田中さんと帰っていった。
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