15

4/7

169人が本棚に入れています
本棚に追加
/50ページ
「あんなに田中さんに愛されてるってわかってても、あんなイケメンでも嫉妬するんですね」 二人を見送りながら、僕はぽつりとつぶやく。 「そりゃそうだよ、俺だって薫と直人に嫉妬したりするよ」 「え?そうなんですか?」 僕なんてどう見たって、『田中さんの犬』じゃないですか? 皆言ってるし。 「さっきも、俺じゃなくて田中を引きはがしたろ?」 だって、田中さんに離れてほしかったから…。 「もう、めちゃくちゃ嫉妬して、俺も田中みたいに直人によしよししてほしかったよ」 ‼よしよしって! な なんかかわいいんですが。 「ん、な 何言ってるんですか」 「直人って、実はドライな感じだよね」 「え?」 「あんま、干渉してこないし」 「そ、そうですかね?」 「まぁ 会社では仕事だからね、それでいいんだけど 今日の飲みも、隣に座らないしさ」 「い いや たまたまでしょ」 そうは言ったものの、蒼さんの隣に座ったら、ドキドキしちゃうから。 触りたくなるし、甘えたくなるし。 「よし、飲みなおすか」 そう言って普通に店に戻っていく蒼さんを、僕もすぐ追いかけた。 「おはよう 昨日はごめんね」 「おはようございます。いえいえ大丈夫ですか二日酔い?」 「余裕のよっちゃんよ」 田中さんの昭和の返答に、通常運転を確認する。 「そういえば、彼氏さんさわやかっすね」 「でしょう?むちゃくちゃ冷静に見えて、むちゃくちゃ嫉妬深いの」 そう言って、幸せそうに笑う。 「日置君にもばっちり嫉妬してたわよ。」 「いや、一番の安パイですけどね。」 そう言って笑いあう。 「でも、こんなこと言ったら失礼ですけど、僕蒼さんみたいな人想像してたから、意外でした。」 「仕事以外で蒼みたいな人に会いたくないわよ、安らげない」 何気に失礼だなぁ。僕には最高の癒しです。 「まぁ、私にとって彼がすべてなように、日置君にとっては蒼がそういう存在なのよね」 そう言って目を細める。 「でも、彼と蒼が唯一似てるのは"嫉妬深い"ってところよね」 「そう…ですか?」 「二人とも独占欲の塊じゃない」 そんなふうには見えないし、感じないけど…。 「でも私は彼に束縛されるのが心地いいし好きなんだけど」 そう言って不敵に笑って、 「さぁ 仕事仕事」と働き始める。
/50ページ

最初のコメントを投稿しよう!

169人が本棚に入れています
本棚に追加