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会社に着いたら広報に資料を置いて、フロントに急ぐ。 何となく、蒼さんの顔が見たい。 「あ 日置君お疲れ」 柴野さんが僕を見つけて声をかける。 「お疲れ様です。あの蒼さんいますか?」 気がせいてしまう。あってどうするかなんてわからないのに、会わなきゃいけない気がする。 「間宮さんならボイラー室見てくるって言ってたよ。」 「あ ありがとうございます。」 そう言って、ボイラー室に急ぐ 「加賀美さんお疲れ様です。間宮さん来てますか?」 ボイラー担当の加賀美さんを見つけて、早口で尋ねる。 「ちょっと前にレストラン行くって、出てったよ」 なんだよ! 「ありがとうございます!」ちょっといら立ってしまう。 「お 日置君」 レストランで吉井さんに声をかけられる。 「あ 吉井さんお疲れ様です。」レストラン内を見まわしながらあいさつする。 「あの、蒼さん来てませんか?」 せかしている僕に優しく笑って、 「さっきパントリーに行ったよ」 と教えてくれた。 「ありがとうございます!」 言うより早く吉井さんに背中を向ける。 「マジうけるぅ」 「え?違うの?」 「違う違う」 そんな会話とともに笑い声が聞こえる。 パントリーの仕切りを覗くと— 蒼さんがバイトの女の子たちとたの思想に談笑している。 「あ、日置さんお疲れ様でーす。」 お疲れ様です。バイトの子たちがおのおの僕に挨拶してくる。 「あ うん お疲れ様です。」 そう答えながら、蒼さんに視線を合わせる。 「お疲れ様どうしたの?」 蒼さんはいつものように穏やかに僕に聞く。 「い いや。別に…。」 何も考えてなかった僕は、何も言えなくなる。 すると、蒼さんは何人かのバイトの子にボディータッチしながら、 「もう一回教えて?」 と何かのステップをしていた。 「…。」 そっとパントリーを後にして、広報室に荷物を取りに帰る。 広報室に帰ると、田中さんが帰る準備をしていた。 「大丈夫?」 田中さんは僕を見て本気でトイレ間に合ったか心配してくれていたようだ。 「あ はい…。大丈夫です。」 力なく笑った僕に、 「ほんと平気?ご飯でも行く?」 と何かを察したらしく、今度は違う心配をしてきた。 でも、田中さんと出かける気にもなれず、 「今日はやめときます。」 笑顔だけ見せておいた。 「…そう? なんかあったら連絡頂戴よ」 気を付けて帰ってね。 送り出してくれた。
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