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うっすらと戻ってきた意識と視界に、見覚えのある感覚を覚える。
あれ?スナックにいて…えっと…ここ…あぁ宿舎の自分の部屋だ。
でも、瞼はなかなかあきたくないと抵抗してくるので、また目を閉じる。
「日置君 日置君?」ん?間宮さん?
「起きないなぁ」間宮さんの声がさっきより近くなって、僕の横に座った気配がする。
「ふふ… やっぱ寝顔もかわいい」
…う。目を閉じているのに見られてるのがわかる。
緊張から、かなり意識は覚醒してるのに、目を開けるタイミングを逃してしまっている。どうしようと思っていると、突然おでこに暖かい感触を感じる。間宮さんが、僕の前髪をかき上げたみたいだ。次の瞬間—
間宮さんの気配が動いて、おでこに柔らかい感触がする。
…!これって唇…?間宮さん何してるの?心臓がうるさい。起きてるのばれたらいけない気がして、必死で平常心を保とうとする。すぐに、間宮さんが立ち上がったような気配がして、僕から離れるのがわかった。
僕は、精いっぱいの芝居を打って
「ん?…ん」といま目が覚めました的な演技をした。
「ま 間宮さん…?」割といい演技力だと自分で自分をほめる。
そしてそっと体を起こす。
「…!あ 日置君起きた?飲ませすぎちゃったっみたいでごめんね」一瞬慌てたようだったけど、すぐにいつもの間宮さんに戻った。
「勝手に上がり込んでごめんね。カギは日置君が自分で開けたんだけど、そのまま放って帰るの悪い気がして…」
「あ すいません。送ってもらっちゃって ありがとうございます。」
「ううん。あ お水飲む?」
「は はい 」僕が答えるとそこにあったコップに水を入れてくれた。
「はい 明日お休みだったよね?俺これで帰るけど、ゆっくり休んでね?」
ほんと、何もかも完璧な人だ。
間宮さんが玄関を開けて
「じゃぁね」
と言った。何となくさみしく感じてしまったけど
「あの、今日は楽しかったです。ほんとにありがとうございました。」と言って送り出した。
しまったドアを見ながら、無意識におでこをおさえてしまった。
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