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「おーい、ラキエス〜!」
遠くから女性の声が聞こえた。聞き馴染みのある声。メイグだ。声のした方角を向くと、ドレス姿の少女が小走りでこちらに向かって来ていた。後ろには中年のふくよかな女性が追いかけている。
「はあ、はあっ。ラキエス、来てたんだね」
「メイグ様。そんな風に走られては、その、はしたないと思われますよ」
距離を置いたような口調のラキエスに、メイグはむすっとした。
「いいの。それくらいのこと。それより、ラキエス。どうして様をつけるの。昔のように呼び捨てでお願い」
「わかったよ。メイグ」
「よろしい。それで、話があるのだけれど、いいかな?」
話。談笑や雑談の類いとは違うのだろうか。ラキエスは一瞬、戸惑ったが、すぐに承諾した。
「ここで立ち話もなんだし、あそこの木陰でいいか?」
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