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噴水広場に、鎧を着た兵士が二人、巡回に現れた。ルオイ国の大きな祭り、聖剣祭に乗じて悪事を働く者が稀にいるためだ。
「賑やかだな」
「あんまりこういう雰囲気は苦手だ。人混みに酔いそうだしな」
話し込む兵士とすれ違う、一人の少年。兵士の一人が少年を見つめた。
「どうした?」
「今の、ラキエスじゃないか?」
「ああ。本当だ」
振り返り、白髪の少年を視界に捉える。もう十八になっていただろうか。
「魔物から受けた後遺症がどうたら、って聞いていたが、動けるようになったのか」
「みたいだな。残念だよな。多才な魔法剣士で有名だったのに、一つの属性しか使えないんだろう?」
「気の毒だ」
「ん?」
何やらラキエスの様子がおかしい。きょろきょろと辺りを確認して、不審だ。しかし、祭りの日だから少し辺りを見回したのだろう、と兵士は解釈した。ラキエスは聖剣が祀られている礼拝堂に向かう。
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