第一話

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「ラキエス。お前、クビな」 仲間のトリスがラキエスに伝える。宿屋の一室には、剣士のトリスの他に、ヒーラーのミミと魔法使いのギサリもいた。トリスも困ったように微笑む。 「お前には悪いと思っているよ。俺を魔物の攻撃から庇ったばかりに、その、後遺症が残っちゃって」 「トリスが悪いわけじゃ、ないだろう……」 と、ラキエスは言うが、最近のトリスは周囲の確認を怠っている節があった。もっと話し合っていれば、状況は変わっていただろうか。 「多彩な魔法剣士って謳い文句も消えて、パーティーの役割、オールラウンダーとしても機能できない。わかるよな?」 「ああ」 他のパーティーを当たれ、ということだろう。入れてもらえたとしても、今までのパーティーよりは格下になることは目に見えている。受けられる依頼も減るに違いない。 気まずそうにしているミミとは対照的に、ギサリははっきりとラキエスに伝えた。 「私たちは英雄になりえるだけの力がある。時間は有限なの。正直、あなたのケアに当たる時間も惜しいわ」
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