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まだ踊り場にいるキヨタは深いため息をつき、モトに弱音を吐いていた。
「モト、誰かの舎弟になるって大変なんだな。俺っち自信無くしそう」
「あほか。こんくらいでヘコんでいたらやってられねえぞ」
「だってさぁ」
少しは自分の腕を信じてくれてもいいのに、ケイは自分の提案を頭から否定してきた。それが切ないやら悔しいやら。
もっと自分を信じてくれてもいいじゃないか。
頼ってくれてもいいじゃないか。
ついて来いと言ってくれてもいいじゃないか。
力を貸してくれ、と一言いってくれるだけで、自分は本当に嬉しいのに。
「ヨウさんも言っていただろ。ケイは周りとすぐに距離を取るんだって。お前のことも、たぶん自分の問題だからって距離を取ったんだろうぜ。あいつは出逢った時からそうだった。全然周りに頼ろうとしねーの。それがめちゃくちゃウザくて腹が立つんだけどなっ、あの野郎ッ……!」
ああもうなんで距離を取ろうとするんだ、もやもやする!
荒々しく頭を掻き、モトが地を這うような声で唸る。ケイとはヨウをめぐった好敵手と公言しているモトだが、彼に対する仲間意識は根強い。
だからこそハッキリきっぱり腹が立つと言えるのだろうが……。
(ケイさんに認められる日は遠いな。俺っち、本当に舎弟になれるのかな)
頼ってもらえないことが、こんなにも心苦しいなんて思わなかった。
ああ、当たり前のように舎兄を頼るケイの、頼られるヨウの、二人の関係性が妬ましい。
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