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(はあああ無事学校に着いたけど、さっそく前橋に嫌味を言われそうだな。一昨日授業をサボってサイゼに行ったことも前橋にバレて、めっちゃ言われたもんな)
今年は進級の手伝いをしてやらないぞって。
うううぅうごめんよ前橋。俺も悪いと思っていた。いたんだけど、付き合いってもんがあってだな。
はああ、ヨウやワタルさんのように開き直れる性格だったらいいんだけど、そういう性格でもないんだよな。元々は良い子ちゃんぶっていた地味真面目くんだったんだ。性格なんて簡単に変えられないって。
(こういうところが中途半端なんだよな。不良とつるんでいるんだから、不良を貫けばいいのに、そんな度胸もないし……かと言って、ヨウ達の付き合いを切って地味真面目くんを貫くことも無理だし)
おかげで周囲の俺の見る目が変わった。悪い意味で変わった。
それに内心、戸惑っている俺がいる。
利二には格好をつけたけど、環境の変化についていけない俺がいるんだ。不良とつるんでいても、地味友とつるんでいても俺は俺なのに周りはそう見てくれない。
二年生になって、より周りの見る目の冷たくなった。
その程度の人間だと見られるようになった。
誰も何も言わないけど、目がそう訴えてくる。
べつに俺が不良とつるんだところで、誰にも迷惑を掛けているつもりはないんだけどな。
(まあ俺もヨウ達と繋がりがなかったら、そっち側の人間だったろうから――みんなの気持ちは分かるんだけどさ)
やだねやだね。
俺のことなんて放っておいて、各々学校生活をエンジョイしてくれたらいいのに。
駐輪場に自転車をとめる。携帯でLINEを確認すると、さっそくワタルさんが寝坊したことについて爆笑しているスタンプを送りつけてきた。あーあ、弄られること確定じゃんか。他人を弄るの大好きだもんなワタルさん。
まあ、でもみんなに会えば気も晴れるだろうし、さっさと前橋のところに行こうかな。
「あんちゃん。今日も恐喝はやめておきます?」
ん? 恐喝?
携帯から目を放して周りを見渡す。
向こうの駐輪場の隅っこで、適当な自転車に腰掛けている生徒が三人。見るからにおサボりをしている生徒は、グレイに髪染めをしている奴がひとりと、残りは青髪か。
グレイに髪染めしている、見るからに不良の男は煙草を銜えて、恐喝に対して気だるそうに返事をしていた。
「荒川が一年の教室を回ったことで、自由に動けなくなったからな。仲間意識が高い男だとは聞いていたが、まさか仲間を率いて一年の教室を脅しに回るとは思っていなかった。そこに舎弟がいたそうじゃないか」
「ちゃんと顔を見たわけじゃないけど、確かに噂の舎弟はいたよ。荒川とは相反して大人しそうだった。染めてもいなかったし、制服を着崩してもいなかった。まあ、ぶっちゃけ荒川にみんな目がいっていたけど……俺もそうだし」
かなしい。
俺の顔、新入生に殆ど注目されてなかったってよ! ……まああれは俺よりもヨウの方が怖かったし、そもそもヨウの存在が目立つよな。見た目的にも。
「荒川の舎弟を騙っても、あんまり問題視されていなかったのはオレ達の身なりのせいだろうなぁ。アンちゃんの計画じゃ、とっくに舎弟は停学処分の予定だったはずなのに」
「それがまず誤算だった。あん達の目的は荒川の舎弟を騙り、荒川とその舎弟を引き離すことにあったんだが……舎弟が消えてくれれば、荒川の“足”を封じることができる。ちと計画を変えないといけないな」
「オレ達が荒川の舎弟に近づけばいいんだろうけど、髪を染め直さないといけないよな」
「そもそも荒川の舎弟って、どんな格好をしているでしたっけ。とりあえず“足”として活躍している話は聞いていますけど……そばかすがあるんだっけな。特徴が全然わかんねえや」
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