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へえ、なるほど。目的は“足”を封じるね。
俺はふたたびLINEに目を落とすと、ワタルさんにスタンプを送り返す。
それが終わると、さっさと駐輪場を後にしてヨウにLINEを送る、その前に携帯が手元からすっぽ抜けた。正しくは携帯に向かって小石をぶつけられた。
たらり。冷汗を流しながら、足を止めて振り返ると、目と鼻の先にグレイ染めの不良が立っていた。いつの間に。
「あの、何か?」
声を振り絞って疑問を投げる。
「お前、聞いていたな?」
盗み聞きしていたことがバレていたようだ。
さり気なく立ち去ろうとしたし、私は通りすがりのモブですよオーラは出していたんだけど、何度も輩を見ていたのが災いしたらしい。
どうする、相手は見るからにガタイの良い不良だ。
ついでに端正な顔をしてやがる。くそカッコイイ顔をしてやがる。声もハスキーボイスで渋い。ヨウとは違ったイケメン。いや男前な顔をしている。
なんてこったい、俺に勝てる要素が一つも見つからないんですけど!
(さすがにここは学校の敷地内だから、喧嘩は仕掛けてこないと思いたいけど……相手は恐喝しまくってるしな)
何も答えない俺を観察する不良は、顎に指を絡めると「丁度いいな」と言って、ひとつ頷いた。
「お前、何年だ」
「え。二年ですけど」
なんでそんなこと聞くんだ? 俺のこと知っているんじゃ……。
「荒川の舎弟と同じ学年なら、ますます使えるな。見た目もおとなしいし、特に目立つ顔でもない」
あれ? 俺、貶されてる? ものすごく貶されてる?! 喧嘩売られてます?! 目立つ顔でもないって、つまりそういうことだよな?!
「お前なら荒川の舎弟を演じられそうだ。チャリも持っているようだから、“足”として偽ることもできる。丁度いい。ちょっとツラ貸せ」
「は、はい?」
ちょっと旦那、貴方はそれは冗談で言っているの? 言っちゃってるの?
目を点にする俺だけど、その不良に思い切り拳骨を喰らったことで身悶えることになる。早く来い、らしい。
いやだってアータ、荒川の舎弟を演じるも何も、俺が荒川の舎弟なんですけど!
もしかして俺の顔をご存知ない?! ないのね?! 名札を見てくれよ、俺の名前は……あ゛、名札プレートは家にあるんだっけ! ああくそ二時限目のチャイムが鳴っちまったし! また欠課が増えるじゃんか! 勘弁してくれよー!
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