03.田山圭太、田山さんのパシリになる

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 へえ、なるほど。目的は“足”を封じるね。  俺はふたたびLINEに目を落とすと、ワタルさんにスタンプを送り返す。  それが終わると、さっさと駐輪場を後にしてヨウにLINEを送る、その前に携帯が手元からすっぽ抜けた。正しくは携帯に向かって小石をぶつけられた。  たらり。冷汗を流しながら、足を止めて振り返ると、目と鼻の先にグレイ染めの不良が立っていた。いつの間に。 「あの、何か?」  声を振り絞って疑問を投げる。 「お前、聞いていたな?」  盗み聞きしていたことがバレていたようだ。  さり気なく立ち去ろうとしたし、私は通りすがりのモブですよオーラは出していたんだけど、何度も輩を見ていたのが災いしたらしい。  どうする、相手は見るからにガタイの良い不良だ。  ついでに端正な顔をしてやがる。くそカッコイイ顔をしてやがる。声もハスキーボイスで渋い。ヨウとは違ったイケメン。いや男前な顔をしている。  なんてこったい、俺に勝てる要素が一つも見つからないんですけど! (さすがにここは学校の敷地内だから、喧嘩は仕掛けてこないと思いたいけど……相手は恐喝しまくってるしな)  何も答えない俺を観察する不良は、顎に指を絡めると「丁度いいな」と言って、ひとつ頷いた。 「お前、何年だ」 「え。二年ですけど」  なんでそんなこと聞くんだ? 俺のこと知っているんじゃ……。 「荒川の舎弟と同じ学年なら、ますます使えるな。見た目もおとなしいし、特に目立つ顔でもない」  あれ? 俺、貶されてる? ものすごく貶されてる?! 喧嘩売られてます?! 目立つ顔でもないって、つまりそういうことだよな?! 「お前なら荒川の舎弟を演じられそうだ。チャリも持っているようだから、“足”として偽ることもできる。丁度いい。ちょっとツラ貸せ」 「は、はい?」  ちょっと旦那、貴方はそれは冗談で言っているの? 言っちゃってるの?  目を点にする俺だけど、その不良に思い切り拳骨を喰らったことで身悶えることになる。早く来い、らしい。  いやだってアータ、荒川の舎弟を演じるも何も、俺が荒川の舎弟なんですけど!  もしかして俺の顔をご存知ない?! ないのね?! 名札を見てくれよ、俺の名前は……あ゛、名札プレートは家にあるんだっけ! ああくそ二時限目のチャイムが鳴っちまったし! また欠課が増えるじゃんか! 勘弁してくれよー!
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