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「そういえば、莉里さん、よくガンクーダンのお菓子やグッズを買ってますけど、甥御さんと一緒に見たりするんですか?」
笹本くんに尋ねられて、困った。
いい年して、ガンクーダンが大好きなんて言ったら、絶対引かれるよね。
「うん、春樹が大好きだから、付き合って見てるよ」
私はつい春樹のせいにしてしまった。
「じゃあ、次回見る時は、ぜひオープニングクレジットも見てみてください」
笹本くんは照れくさそうに言う。
「えっ? もしかして、笹本くん、出てるの!?」
毎週、欠かさず見てるけど、全然気が付かなかった。
「出てるってほどでは……」
言葉尻を濁す笹本くん。
なんだろう?
気になる。
「あ、もしかして、敵役!?」
敵はメインの怪人の他にも覆面みたいなのをつけた奴らがたくさん出てくるもんね。
「いえ……」
否定するものの、やっぱりはっきりしない。
「じゃあ、何?」
気になった私はつい笹本くんの袖を掴んでしまった。
「あっ……」
自分の迂闊さに気づいた私は、慌てて手を下ろして、目を伏せる。
すると……
「くすっ」
頭上で微かな笑い声がした。
あ、笑われた。
恥ずかしい……
私がもう顔を上げられないでいると、ぽんっと頭の上に大きな手が置かれた。
「莉里さんって、かわいいですよね」
えっ?
今、なんて?
「年上なのに、偉ぶらないし、素直で、守ってあげたくなる」
ダメよ。
そんなこと言われたら、期待しちゃうじゃない。
頭の上の手のひらが気になって、全神経が頭に集まってるみたい。
「俺、ガンクーエースなんです」
「えっ!?」
驚いた私は、慌ててブンっと顔を上げた。
すると、笹本くんは、いつもは真ん丸の大きな目を細めてくすくすと笑う。
「これ、本当は誰にも言っちゃダメなんです。内緒にしてくださいね」
えっ、だって……
「でも、ガンクーエースは、前原 央喜くんよね?」
笹本くんは確かにイケメンだけど、私が毎週、目をハートにして見てる前原くんとはタイプが違う。
「くくくっ、ほら、やっぱり素直でかわいい」
笹本くんは、また笑う。
「ヒーローものは大抵、二人一役なんですよ。変身前は前原さんで、変身後は僕なんです」
そう言われて、私はハッとした。
そうよ!
変身後は顔が見えないんだもん、本人がやる必要はないのよね!
「じゃあ、あの、キレッキレのアクションは笹本くん?」
私が好きだと思ってたのは、前原くんじゃなかった!?
「はい」
笹本くんはにこやかに微笑んだ。
「このことを知ってるのは、関係者以外では莉里さんだけですからね。親も知らないんですから」
えっ?
どうしよう。
気のせい?
なんだか、特別って言われてるような錯覚に陥る。
「今日、莉里さんが危ない目に遭って、はっきり分かりました。地球の平和はガンクーダンが守りますが、莉里さんは俺が守ります」
えっ、それって……
どうしよう。
胸がドキドキする。
期待していいの?
笹本くんは、私の頭に置いてた手を下ろすと、スッと私の手を握った。
「莉里さん、俺に守らせてくれますか?」
こんな嬉しいことある?
何も言えない私は、ただ、こくこくと頷くことしか出来なかった。
─── Fin. ───
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