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「たまにしか運転しないんだけどさ。……ねぇ、名前で呼んでくれない? だめ?」
「……気が向いたら」
小声で返してきた。早くも可愛い。
湖に到着すると同じように天体観測をする人たちが天体望遠鏡をセットしている。
「結構見えますね」
夜空を見上げ小さく「綺麗」と呟いたのが聞こえた。
「そうなんだよ。ここ良く見えるんだよね。夏の大三角って知ってる? ベガとアルタイル……織姫と彦星なんだけどさ。あのぼんやり白くなってるところあるでしょ。あれが天の川」
「へぇー、天の川? 七夕過ぎてるのに?」
「うん。天の川って1年中見れるんだよ。夏の時期が適してるってだけで。新月だから良く見えるな。……よかった。玲ちゃんに見せてあげられて」
これを見せたかった。
彼女の気持ちを聞いてから尚更女の子扱いをしてあげたくなった。ロマンチックなことをこれでもかというほどしてあげたい。似合わない、なんて言わせない。今まで蓋をしてきたものを解放させてあげようと思っている。
「一応、天体望遠鏡も持ってきたけど、土星とか興味ある? 木星とか。僕はそっちが好きなんだけど、興味がない人は肉眼でキラキラしてるの見てる方が楽しいかも」
「土星って、輪っかも見れるの? これで?」
「うん。見てみる?」
「見る」
興味を持ってくれたようで安心した。しばらく天体観測を楽しむ。
「そろそろ帰ろうか」
「……うん」
彼女の一瞬の間の意味をすぐに理解した。
「僕の家に寄って行かない? って誘いたいところなんだけどさ……妹と一緒に住んでるし、玲ちゃんの親御さんに心配かけちゃうからやめておくね」
軽く笑って、丁寧にキスをする。
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