オムライス

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男はグダグダ言うもんじゃないと言われて育った。メソメソ泣くのも駄目だと。 そんな僕が、もう少しだけ自分の意思を強く主張できる男だったら、何をどう言えたんだろう。 アパートの階段を降りていく彼女の足音には未練なんかちっともなさそうで、その一歩一歩が遠ざかるたび、胸の奥でグダグダのカケラが弾けた。 僕はベランダへ向かった。 バタンと、丁寧に閉めてもらえなかったドアが叱るような音を立てたのに体をビクつかせたけれど、それでも進んで行って、勢いよくカーテンを開けた。 窓の鍵も開けて思い切り左へ引くと、軽くて薄い窓は勢い余って跳ね返り、僕の体に仕返しを食らわせてきた。 ちょっと呻いて左腕を押さえ、サンダルも置いていないベランダに出る。 十二月の風に冷やされたコンクリートの床が、靴下一枚の足をすぐさま冷やす。 足の指が丸まった。 寒さに肩を竦めながら首を捻った。 道路の方に目を凝らせば、まだアパートの前の道を歩いていた彼女の後ろ姿を見つけた。
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