オムライス

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「別れよっか」 「……は?」 虚を突かれるとはきっと、このことだ。 口へ運ぼうとしていたオムライスをどうするべきか躊躇って、でもせっかくだからと頬張った。 だって、作ったのは僕じゃない。 「別に嫌いになったわけじゃないよ? けど、これでいいのかなって思っちゃったっていうか……」 まだ求めてもいないのにささっと理由を広げられた。 オムライスの気分じゃなかった、なんて理由で言われる冗談にしてはキツイと思ったが、彼女が冗談のつもりで言ったんじゃないらしいとわかり、この食べかけの食事はどうするべきか、それを悩んでしまった。 結局、もう少しだけ、と一口分掬って口に入れる。 いつも通りの味だ。 何が食べたい、と聞かれたからオムライスと答えたのだが、まさかこれが彼女との最後の晩餐になるのだろうか。 言われてみれば、黄色いたまごの上に赤いハートマークはなかった。 初めて作ってくれた時はあったような気がするのに、いつからそれは無くなったんだろう。
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