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――まさか、俺……酔っ払って線路に落ちてうっかり死んだ……?
ライトノベルで有名な、トラックで死んで異世界!よりもずっとカッコ悪い死に方ではないか。というか酔っ払いを散々貶しておいて自分も酔ってやらかすなんて、ブーメランにもほどがある。しかも電車で死んだのが本当なら、それって駅関係者にも家族にも死ぬほど迷惑を掛ける最期ではあるまいか。
これが追い詰められて自殺というならまだ同情の余地もあろうが、自業自得の事故ではもう泣くに泣けないに違いない。
――さ、最悪だ!最悪だ!ていうか、それならせめて前世の記憶を消してくれよ!なんで俺全部覚えてんだよおお!
orz、とその場に膝をついてがっくりする俺。しかもなんだかこの“シルフィ”とかいう男の娘キャラも、さっきのスーツのイケメンも、なんかどこかで見たことがある気がするのが問題だ。よもや、どこかのゲームの世界に転生してしまいました、なんてオチだろうか。
恐る恐る、もう一度鏡の中を見る。
これが自分ではなく、そしてマジな女の子ならかなり好みのストライク、だったかもしれない。ロリコンの気はないので、あくまで“妹として愛でたい”タイプの可愛さだが。
「あのぅ……どちらさんでしたっけね、お前さん?」
思わず鏡に、自問自答。
当然答えが返ってくるはずもない。
「シルフィが来たって、マジマジ!?」
「ほんとだ、ほんとにシルフィちゃんだ!」
「ね、言った通りでしょ?」
そのタイミングで、ドアが勢いよく開いて――イケメン達がバラバラとご入場。先程の白いスーツの、ホストかヤクザみたいなイケメン君以外にも、金髪ハネ髪のイケメンやら、高校生くらいのジェニーズ系のイケメンとか、がっしり筋肉質のイケメンとか、イケオジ様とか。
ありとあらゆるタイプのイケメン様たちが、ぞろぞろと登場。見事に女子が一人もいない。
――な、何やら覚えがあるぞこの環境!
もしやこれ、乙女ゲーとか、BLゲーとかいうやつなのでは。そこまで考えて、俺の頭の上に電球が瞬いた。ああ、なんとも古典的に。
――お、思い出した!これ、妹が……佐奈が好きだったゲームじゃねえか!!
元ヤンフリーター男子、酔っ払って死んだら妹が大好きなBLゲーの男の娘に転生してました。
一体誰得だこのシチュエーション!と俺は盛大に心の中で叫んでいたのだった。
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