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BLファンタジーゲーム『茜の庭で君と共に。』。それは、異世界からの侵略の危機に晒されたファンタジーな世界を舞台にした、BL&キャラ育成ゲームである。主人公は、精霊達を召喚する選ばれし力を持った召喚士の青年。彼はその力をもってして、異世界からの侵略者を最前線で防ぐ役目を担っていた。自分が召喚した、見目麗しい精霊達の指揮を取って、魔王軍と戦うのである。
精霊たちはみんな見目麗しいイケメンの姿をしている。そして、自分たちを召喚した召喚士である主人公を、偉大な御主人として尊敬し付き従っているという設定だ。主人公は召喚を繰り返しながら精霊男子たちを増やし、育成し、絆を育みながら魔王軍を討伐してハッピーエンドを目指す――俺の記憶が正しければ、たしかそんなシナリオだったはずである。
で、これはBでLなゲームなわけだ。イケメン同士の恋愛に萌えたい腐った乙女の方々が楽しむゲームなのだ。実際、俺の妹も腐女子というやつで、とにかくいかに好感度を操って推しCPを成立させるか悩んでいた様子である。このテのゲームにしては珍しく、主人公総受けだけでなく主人公総攻めも選べて、最終的に好きなキャラとの結婚エンドを迎えられるのだ――とかなんとか、やたらと力説された記憶があった。
それで、なんで腐男子でもなんでもない俺がそんなにゲームについて詳しいのかと言えば。まだ俺が高校生の頃、妹がそれはもう四六時中部屋でゲームをやっていて、それはそれはことあるごとに熱く語ってくれたせいと言える。なんせ、当時なんと俺と妹の部屋が一緒だったのだ。貧乏な家だから仕方ないと言えばそうだが、妹も妹で思春期に入ってもまったく関係なく共同の部屋で着替えをしていたほどだった。まあ、それほどまでに関係が近い兄妹だったからこそ、妹は気にすることなくBでLなそのゲームを堂々と兄貴の机の後ろでプレイしていたわけだろうが。
話を戻そう。
そんなゲームがあることはいい。実際に自分では殆どプレイしてないが、内容は大体覚えてしまっている。まあそれは不可抗力として仕方ないこととして。
――なんで、よりによって元ヤンなフリーターの俺が、このゲームの世界に転生なんてことになんの?
これに尽きる。
異世界転生したら元の世界のゲームの世界でした、という時点でもあまりにも都合が良すぎて意味がわからないが。それ以上に謎でしかないのは、一体この展開って誰得?ということだ。
なんせ転生したとはいえ、記憶も人格も元の俺、千葉聡のまんまなのである。当然趣向はストレートなつもりだし、恋愛対象も女の子限定。いくらムサ苦しさを感じないキラキラしたイケメン集団とはいえ、はっきり言って全く俺得要素がないのである。なんで女の子じゃなくて俺がこの世界に転生しちゃったんだ、しかもなんでピンポイントで唯一の男の娘キャラになっちゃったんだと思わざるを得ない。
男の娘キャラ、シルフィも確か主人公の攻略対象の一人である。要するに、シルフィは主人公ではない。同じ男とフラグが立っても困るが、そもそも主人公以外とフラグも立ちようのないポジションだ。唯一の幸いは、シルフィが子供の見た目であることもあって、犬猿の仲と呼ばれるようなキャラが殆ど登場しないということではあるが。
――だからって……俺の人格と記憶で、この見た目はぶっちゃけきっつい……!
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